1089 |
● ふしぎな数1089 ●
ピタゴラス数に続いて、寺田恵一さまからメールをいただきました。
今度は、ふしぎな数「1089」です。
これは、ハヤカワ文庫<数理を愉しむ>シリーズ『数学はインドのロープ魔術を解く』に
載せられていた話題だそうです。
まず、本に載っている話題は、こんなものです。
まず、3桁の数を思いうかべてください。
100の位と1の位の数字に、2以上差があれば、どんな数でもいいのです。 (はやい話が、差が1ではダメということです。) 本では、287としています。 次に、これを逆さにならべかえます。 すると、782となります。 ここで、大きい方から小さい方を引きます。 782−287=495 さらに、この数を逆さにならべかえます。 すると、594となります。 さあ、この2つの数をたすと、どうなるでしょう。 じつは、いつでも1089になるのです。 495+594=1089
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<やってみよう!>
ためしに、一度やってみましょう。
まず、3桁の数を思いうかべます。
今度は、139としてみます。
次に、これを逆さにならべかえます。
すると、931となります。
ここで、大きい方から小さい方を引きます。
931−139=792
さらに、この数を逆さにならべかえます。
すると、297となります。
さあ、この2つの数をたすと、どうなるでしょう。
792+297=1089
<やってみよう!>
なんなら、もう一度やってみましょう。
まず、3桁の数を思いうかべます。
今度は、246としてみます。
次に、これを逆さにならべかえます。
すると、642となります。
ここで、大きい方から小さい方を引きます。
642−246=396
さらに、この数を逆さにならべかえます。
すると、693となります。
さあ、この2つの数をたすと、どうなるでしょう。
396+693=1089
なんとなく、共通点が見えてきましたね。
もう一度、ならべて書いてみます。
495+594=1089 ちなみに、4+5=9,9+9=18,5+4=9
792+297=1089 ちなみに、7+2=9,9+9=18,2+7=9
396+693=1089 ちなみに、3+6=9,9+9=18,6+3=9
ここで、9+9=18 の繰り上がりを考えると、1089となるのです。
さて、このことを考える前に、3桁の数の100の位と1の位の数字の差が、
1では本当にダメなのかどうかも見てみましょう。
<やってみよう!>
ためしに、やってみましょう。
まず、差が1の3桁の数を思いうかべます。
今度は、132としてみます。
次に、これを逆さにならべかえます。
すると、231となります。
ここで、大きい方から小さい方を引きます。
231−132=99
おやおや、2桁になってしまいます。
これでは、話が変わってくるというものです。
● 証明? ●
さて、このマジックのタネを考えてみましょう。
といっても、ならべて書いたものを見ると、何をすべきか見当がつきます。
495+594=1089 ちなみに、4+5=9,9+9=18,5+4=9
792+297=1089 ちなみに、7+2=9,9+9=18,2+7=9
396+693=1089 ちなみに、3+6=9,9+9=18,6+3=9
ここで、9+9=18 の繰り上がりを考えると、1089となる。
この前の、大きい方から小さい方を引いた結果の方が、問題なのです。
782−287=495 ちなみに、4+5=9
931−139=792 ちなみに、7+2=9
642−246=396 ちなみに、3+6=9
結果は、いつだって10の位が9、100の位と1の位をたしたものが9になっています。
このマジックは、ここさえ示せればいいのです。
さあ、それでは、
どんな3桁の数でも、逆さにならべかえた数との差が(大きい方から小さい方を引く)
いつだって10の位が9、100の位と1の位をたしたものが9になる
といえるのでしょうか。
こういうときは、なんといっても文字式で考えると便利です。
どうせ、大きい方から小さい方をひくのですから、最初から
「abc」が、ならべかえた「cba」より大きい
としましょう。
早い話が、aの方がcより大きいということです。
「abc」は、100a+10b+c です。
「cba」は、100c+10b+a です。
さあ、引いてみましょう。
(100a+10b+c)−(100c+10b+a)
=100(a−c)+0+(c−a)
さあ、この数の100の位、10の位、1の位は何になるでしょうか。
小学校のときを思い出してください。
まず、「100(a−c)+0+(c−a)」の1の位から見てみましょう。
aの方がcより大きいのですから、(c−a)をするために10の位から借りてきます。
そうすると、
1の位は 10+c−a
となります。
次に、「100(a−c)+0+(c−a)」の10の位を見てみます。
10の位は 0 なので、100の位から借りてきて、さっき貸した1を引くことになります。
ですから、
10の位は 9
となります。
最後に、「100(a−c)+0+(c−a)」の100の位を見てみます。
さっき、1貸したので、(a−c)より1へります。
そうすると、
100の位は a−c−1
となります。
今までやった例でも、たしかにそうなっています。
782 のとき 100の位は7−2−1=4,1の位は10+2−7=5
931 のとき 100の位は9−1−1=7,1の位は10+1−9=2
642 のとき 100の位は6−2−1=3,1の位は10+2−6=6
さて、10の位が9の方は分かったので、
100の位と1の位をたしたものが9になるかどうかを見てみます。
1の位は 10+c−a
100の位は a−c−1
これを、たすだけです。
(10+c−a)+(a−c−1)=9
たしかに、いつだって 9 になります。
● 1089 ●
さて、ここからが寺田恵一さまからいただいたメールです。
それだけではありません。 1089×1=1089 <−−−−−> 1089×9=9801 1089×2=2178 <−−−−−> 1089×8=8712 1089×3=3267 <−−−−−> 1089×7=7623 1089×4=4356 <−−−−−> 1089×6=6534 1089×5=5445 <−−−−−> 1089×5=5445 このように、かける数がたして10になるときは、数字が逆にならんでいます。 ますます不思議ですね。
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さあ、どうしてでしょうか。
じつは、これは9の段の九九がネタなのです。
さあ、9の段の九九の復習です。
9×1=09 ちなみに 1+9=10
9×2=18 ちなみに 2+8=10
9×3=27 ちなみに 3+7=10
9×4=36 ちなみに 4+6=10
9×5=45 ちなみに 5+5=10
9×6=54 ちなみに 6+4=10
9×7=63 ちなみに 7+3=10
9×8=72 ちなみに 8+2=10
9×9=81 ちなみに 9+1=10
ちなみに、この理由はかんたんです。
たとえば、こんなふうになっています。
9×3=(10−1)×3=30−3=20+10−3=20+7=27
ここで、3+7=3+(10−3)=10
このことを頭におくと、まず1000の位と1の位は納得です。
1089×1=1089 <−−−−−> 1089×9=9801
1089×2=2178 <−−−−−> 1089×8=8712
1089×3=3267 <−−−−−> 1089×7=7623
1089×4=4356 <−−−−−> 1089×6=6534
1089×5=5445 <−−−−−> 1089×5=5445
それでは、100の位と10の位はどうなっているのでしょう。
じつは、これも9の段の九九がネタなのです。
9×1=09 <−−−> 1089×1=1089
9×2=18 <−−−> 1089×2=2178
9×3=27 <−−−> 1089×3=3267
9×4=36 <−−−> 1089×4=4356
9×5=45 <−−−> 1089×5=5445
9×6=54 <−−−> 1089×6=6534
9×7=63 <−−−> 1089×7=7623
9×8=72 <−−−> 1089×8=8712
9×9=81 <−−−> 1089×9=9801
そうですね。かけ算の九九より1だけ小さくなっています。
これは、たとえばこんなふうになっているからです。
1089×3=3267 で 89×3 を見てみます。
89×3=(90−1)×3
=270−3
=260+(10−3)
こんなわけで、9の段の九九より1へります。
そうすると、9の段の九九から、100の位と10の位も納得です。
9×1=09 (0+9=9) <−−−> 1089×1=1089 (0+8=8)
9×2=18 (1+8=9) <−−−> 1089×2=2178 (1+7=8)
9×3=27 (2+7=9) <−−−> 1089×3=3267 (2+6=8)
9×4=36 (3+6=9) <−−−> 1089×4=4356 (3+5=8)
9×5=45 (4+5=9) <−−−> 1089×5=5445 (4+4=8)
9×6=54 (5+4=9) <−−−> 1089×6=6534 (5+3=8)
9×7=63 (6+3=9) <−−−> 1089×7=7623 (6+2=8)
9×8=72 (7+2=9) <−−−> 1089×8=8712 (7+1=8)
9×9=81 (8+1=9) <−−−> 1089×9=9801 (8+0=8)
● 10989,109989 ●
寺田恵一さまは、さらに続けました。
10989×1=10989 <−−−−−> 10989×9=98901 10989×2=21978 <−−−−−> 10989×8=87912 10989×3=32967 <−−−−−> 10989×7=76923 10989×4=43956 <−−−−−> 10989×6=65934 10989×5=54945 <−−−−−> 10989×5=54945
まだあります。 109989×1=109989 <−−−−−> 109989×9=989901 109989×2=219978 <−−−−−> 109989×8=879912 109989×3=329967 <−−−−−> 109989×7=769923 109989×4=439956 <−−−−−> 109989×6=659934 109989×5=549945 <−−−−−> 109989×5=549945
このように9を追加しても、かける数がたして10になるときは、数字が逆にならんでいます。 9を追加するのは、いくつでもよさそうです。 ほかにもあるでしょうか。
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1089×2=2178 <−−−> 10989×2=21978 <−−−> 109989×2=219978
9を追加すると、かけた結果にも、どんどん9が追加されます。
9ばかりならべば、数字が逆になっているかどうかは問題になりません。
さあ、9を追加すると、かけた結果にも、どんどん9が追加されるのはどうしてでしょうか。
まあ、9ですからね。どっちみち、9の段の九九です。
1089×2=2178 10089×2=20178 100089×2=200178
+) 900×2= 1800 900×2= 1800
10989×2=21978 +) 9000×2= 18000
109989×2=219978
やっぱり、9の段の九九で 9×2=18 で 1+8=9 がきいていますね。
もうひとつ、やってみましょう。
1089×8=8712 <−−−> 10989×8=87912 <−−−> 109989×8=879912
1089×8=8712 10089×8=80712 100089×8=800712
+) 900×8= 7200 900×8= 7200
10989×8=87912 +) 9000×8= 72000
109989×2=879912
やっぱり、9の段の九九で 9×8=72 で 7+2=9 がきいていますね。
さあ、それでは他にもあるのでしょうか。
えっ、私ですか・・・?
私は、これから、たまりにたまった家事をしなければ・・・
それでは、みなさんに期待しています!
「果報は寝て待て」と言いますから・・・(私の好きな言葉です)
おっと、私は寝てなんかいませんよ。そうそう、家事をしなくちゃ・・・。
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小林吹代
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