母関数

● ペンタグラム ●

 ピタゴラス教団のシンボルマークは、
なんと下の図のようなペンタグラム星形五角形)でした。

 さて、このペンタグラムの頂点をむすんで、
どんどん正五角形をかいていくとどうなるでしょう。

 

 

 おやおや、どこかでお目にかかった数がならんでいますね。

     α

     α+

     α+

     α+

     α+

     α+

 

 そうです!フィボナッチ数です。

 では、αは・・・?

 もちろん(?)黄金数です。

 じつは、正五角形の一辺と対角線の長さの比は、黄金比になっているのです。

 さらには、αが黄金数ということは α=α+1 ですから、
こんな式がなりたちます。

    α      α+1     2α+1     3α+2     5α+3
   ---- = -------- = -------- = -------- = -------- = ・・・
    1       α       α+1     2α+1     3α+2

 さあ、(このことからも)こんなことがわかりますね。

     α=α

     αα+

     αα+

     αα+

     αα+

     αα+

 さて、黄金数αは α=α+1 でしたが、

     x=x+1 つまり x−x−1=0

の解はもうひとつありました。それをβとしましたね。

        1+/          1−/
     α=--------   , β= --------
         2              2

 じつは、β=β+1 から βについても同じようにして
こんなことがわかります。

     β=β

     ββ+

     ββ+

     ββ+

     ββ+

     ββ+

 これから、たとえば5番目のフィボナッチ数でしたら、こんなふうになります。
 (すでに、やったことがありますね。)

       αα+3 
     
)ββ+

    α−β(α−β)

    α−β 
   ---------- = 
     α−β

 ここで、α−β=/ ですから

         1
     = ----(α−β )
         / 

 


● 単数 ●

 さて、<お勉強>の「ペル方程式」の最後に、こんなことを書きました。

 ・・・ じつは、「黄金数」も基本単数です。
 では、こちらではどんなふうになるのでしょうか。・・・

 さて、どんなことがいえましたか。

 やってみましょう!!

 まず、

        1+/          1−/
     α=--------   , β= --------
         2              2

 これから、αβ=−1 です。

 このことは、α,βが

     x=x+1 つまり x−x−1=0

の解ですから、高校生、とくに受験生によく知られている
解と係数の関係になっています。

 そうすると、こんなことがいえますね。

      αβ=−1 

     αβ=1 

     αβ=−1 

     αβ=1 

     αβ=−1 

 さあ、これからどんなことが出てくるでしょう。

 その前に、
     β ,β ,β ,β ,β ,・・・・・ 
をαを用いて表してみましょう。

 今度も、ちょくせつ計算してもいいですが、
解と係数の関係から

     α+β=1

 ということは、

     β=1−α

 さらに、

     β=β+1=(1−α)+1=2−α

     β=β+β=(2−α)+(1−α)=3−2α

     β=β+β=(3−2α)+(2−α)=5−3α

     β=β+β=(5−3α)+(3−2α)=8−5α

 またまた、どんどんフィボナッチ数がでてきましたね。

 さあ、これを使って、書きかえてみましょう。

      αβ=−1   は  α(1−α)=−1

     αβ=1    は  (1+α)(2−α)=1

     αβ=−1  は  (1+2α)(3−2α)=−1

     αβ=1   は  (2+3α)(5−3α)=1

     αβ=−1  は  (3+5α)(8−5α)=−1

 おやおや、どれも連続した3つのフィボナッチ数がでてきています。

     (1+α)(2−α)=1    なら  1,1,2

     (1+2α)(3−2α)=−1  なら  1,2,3

     (2+3α)(5−3α)=1    なら  2,3,5

     (3+5α)(8−5α)=−1   なら  3,5,8

  (1+α)(2−α)や(1+2α)(3−2α)・・・を展開する前に
急がば回れで、まず次の式を展開してみます。 

      (x+yα)(x+yα)
     =x+xα+xα+yα 
     =x+xα+xα+y(α+1)
     =(x+y)+(x+x+y)α   ・・・ (1)

 さらに、こんなことを考えてみます。

     A=x+yα としたとき  =x+yβ とします。

 ところで、 β=1−α でしたから

     =x+yβ 
      =x+y(1−α)
      =(x+y)−yα

 そこで、(1)をつかって 

    A=(x+yα)((x+y)−yα) 

を展開します。

    x=x , y=y , x=x+y , y=−y

として計算すると

    x+y=x(x+y)+y(−y)
            =x(x+y)−y 

    x+x+y=x(−y)+(x+y)y+y(−y)
                =−xy+xy+y−y 
                =0

 けっきょく、αの係数は消えて(このことは、じつは一般論から言えるのですが・・・)

    A(x+yα)((x+y)−yα)=x(x+y)−y

 ということは・・・・

     αβ=1    より   1×2−1=1

     αβ=−1  より   1×3−2=−1

     αβ=1    より   2×5−3=1

     αβ=−1   より   3×8−5=−1

 な〜んだ!<お勉強>の「フィボナッチ数」で一度やったことは
こんなことがネタだったのですね。

 


● 一次結合 ●

 今度はわり算をして、ど〜んとフィボナッチ数をだしてみます。

 こんな多項式のわり算をするのです。

     x ÷(x−x−1)

     x ÷(x−x−1)

     x ÷(x−x−1)

     x ÷(x−x−1)

     x ÷(x−x−1)

 

 ちなみに、しつこいようですが、黄金数αは

     x−x−1=0

の解でした。

 それでは、全部まとめて1回でわり算してしまいましょう。
 (係数だけ書いてわり算します。)

 

               1  1  2  3  5  8       
    1 −1 −1 ) 1  0  0  0  0  0  0  0 
               1 −1 −1  
                  1  1  0
                  1 −1 −1  
                     2  1  0
                     2 −2 −2  
                        3  2  0
                        3 −3 −3  
                           5  3  0  
                           5 −5 −5  
                              8  5  0
                              8 −8 −8
                                13  8

 わり算のけっかは、こうなりましたね。

     x ÷(x−x−1)= あまり 1x+1

     x ÷(x−x−1)=1x+1 あまり 2x+1 

     x ÷(x−x−1)=1x+1x+2 あまり 3x+2 

     x ÷(x−x−1)=1x+1x+2x+3  あまり 5x+3  

     x ÷(x−x−1)=1x+1x+2x+3x+5 あまり 8x+5

 これらのわり算のたしかめ算は

     x = (x−x−1)+1x+1

     x = (1x+1)(x−x−1)+2x+1 

     x = (1x+1x+2)(x−x−1)+3x+2 

     x = (1x+1x+2x+3)(x−x−1)+5x+3  

     x = (1x+1x+2x+3x+5)(x−x−1)+8x+5

 

<x=α を代入>

 まず、x=α を代入すると、α−α−1=0 ですから

     αα+

     αα+

     αα+

     αα+

     αα+

と出てきますね。

 

<x=1 を代入>

 今度は、x=1 を代入してみます。ためしに、

     x = ( 1x+1x+2x+3x+5)(x−x−1)+8x+5

に代入してみると

     1 =(1+1+2+3+5)(−1)+8+5

     1+1+2+3+5 = 13−1

 これも、<お勉強>の「フィボナッチ数」で一度やったもので、
フィボナッチ数をじゅんにたすと、最後の次の次の数から1ひいたものになる
とまとめましたね。

 

<x=−1 を代入>

 今度は、x=−1 を代入してみます。今度はためしに、

     x = ( 1x+1x+2x+3)(x−x−1)+5x+3  

     x = ( 1x+1x+2x+3x+5)(x−x−1)+8x+5

の両方に代入してみると

 奇数乗のとき

     −1 = (−1+1−2+3−5+3  
       1 = 1−1+2−3+5−3 
    1+3 = 1−1+2−3+5

のように、たすひくを奇数回すると、
1にさいごの1つ前の数をたしたものになります。

 

 偶数乗のとき

     1 = ( 1−1+2−3+5−8+5 
   1−5 = 1−1+2−3+5−8

のように、たすひくを偶数回すると、
1からさいごの1つ前の数をひいたものになります。

 これは、まだやっていなかったような気がしますね。

 


● 母関数 ●

 さあ、やっと今回のテーマです。(と言っても、つけたしですが・・・)

 (フィボナッチ数のような)数列に xの累乗(るいじょう)をくっつけて、
形式的べき級数の形にしたものを考えるのです。

     F(x)=x++・・・・・

 そして、これをもとの数列の母関数(ぼかんすう)とか生成関数というのです。

 もちろん、収束(しゅうそく)なんかを問題にしたいのではなくって、
もとの数列の一般項を知りたいときなどに使うのです。

 では、ためしに使ってみましょう。

 さっきのわり算を、ちょっと見方をかえると

 

              1x+1x+2x+3x+5x+8x+・・・ 
    1 −x −x )1x  0   0   0   0   0 
              1x−1x−1x 
                 1x+1x  
                 1x−1x−1x 
                     2x+1x 
                     2x−2x−2x
                         3x+2x 
                         3x−3x−3x
                             5x+3x  
                             5x−5x−5x
                                 8x+5x 
                                 8x−8x−8x
                                    13x+8x 

 ということは、

        x
     ------------ = 1x+1x+2x+3x+5x+8x+・・・ 
      1−x−x 

 

              x
     F(x)= ------------
            1−x−x 

 ところで、α+β=1 , αβ=−1 でしたから

                    x
     F(x)= ------------------------
            1−(α+β)x+αβx 

                 x
        = --------------------
            (1−αx)(1−βx) 

             1          1        1
        = -------- × ( -------- − -------- )
           α−β       1−αx    1−βx 

             1          1        1
        = -------- × ( -------- − -------- )   ・・・ (2)
            /         1−αx    1−βx 

 

 さて、

        F(x)=   x++・・・・・

      1
    -------- = αx+αααα+・・・・・
    1−αx 

      1
    -------- = βx+ββββ+・・・・・
    1−βx 

 ここで、(2)の両辺を見くらべると、たとえば x の係数から

         1
     = ----(α−β )
         / 

と、またまた出てくるというわけです。

 

 今回も、黄金数とフィボナッチ数についてでした。
 これだけやると、なんとなく親しみがわいてきますね。

 


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