カタラン数(3)

● カタラン数 ●

 カタラン数は、このホームページでは、
道順(みちじゅん)が何通りあるかという個数でしたね。

 たとえば、下の図で青い数字になっているところまで
(より道しないで)いく行き方は、

     1 , 1 , 2 , 5 , 14 , 42 , ・・・

です。

 そして、これがカタラン数とよばれるものでした。

 (ちなみに、いちばん下の青い数字をむすぶ線は道ではありませんよ!)

 

 でも、さいしょにカタランが考えたのは、道順の個数ではなく、
こんな問題でした。

 たとえば、

     a+b+c+d 

のたし算の順番(じゅんばん)を考えます。

 (もちろん、a×b×c×d のように、かけ算でもいいのです。)

 そうすると、つぎの 5 通りがあります。

     (((a+b)+c)+d)

     ((a+(b+c))+d)

     ((a+b)+(c+d))

     (a+((b+c)+d))

     (a+(b+(c+d)))

 えっ、いちばん外のかっこは、つけなくっていいって?

 じつは、これからのお話のつごうというものがあるのです。

 このように、

     たし算やかけ算などの順番のつけ方が何通りあるか

といった問題を、カタランは考えたのです。

 


● 結合の方法 と 道順の個数 ●

 さて、これから

     たし算の順番のつけ方 と 道順の個数

が同じ数だけあることをみていきましょう。

 同じ個数だけあるっていいたいときには・・・
そう、「1対1の対応(たいおう)」をつけてみせればいいのですね。

 このホームページの「トーナメント戦」の
<森の木を数える>のところでやったようにねっ!

 その前に、

     (((a+b)+c)+d)

     ((a+(b+c))+d)

     ((a+b)+(c+d))

     (a+((b+c)+d))

     (a+(b+(c+d)))

から、いらないものをけしてしまいます。

 まず、a b c d をけします。

     (((+)+)+)

     ((+(+))+)

     ((+)+(+))

     (+((+)+))

     (+(+(+)))

 これから、もとのa b c d がある形にもどす方法は
1通りですから、いらないってことで、けしてしまうのです。
 (ためしに、やってみてね!)

 でも、「+」は、けしてはいけません。

 たとえば、

     (((+)+)+)

から、「+」をけすと

     ( ( ( ) ) )

となりますが、これでは

     (((a+b+c+d

     ((a+b+c))+d

     a+((b+c+d))

     a+b+c+d)))

といろいろあって、もとにもどしようがなくなります。

 ところが、じつは「 」なら、いらないのです。

     (((+++

     ((+(++

     ((++(+

     (+((++

     (+(+(+

 これから、もとのa b c d と 「 」 がある形にもどす方法は
1通りなのです。

 さて、この3つの「( 」 と 3つの「+」 のならべ方ですが、

     (((+++

     ((+(++

     ((++(+

     (+((++

     (+(+(+

これらはどれも、とちゅうまでの「( 」の個数が、
「+」の個数より多いか同じであるものになっています。

 たとえば、

     ((+(++

でみてみると、

     (        ・・・ ここまでの 「( 」は1個 、「+」は0個
     ((       ・・・ ここまでの 「( 」は2個 、「+」は0個
     ((+      ・・・ ここまでの 「( 」は2個 、「+」は1個
     ((+(     ・・・ ここまでの 「( 」は3個 、「+」は1個
     ((+(+    ・・・ ここまでの 「( 」は3個 、「+」は2個
     ((+(++  ・・・ ここまでの 「( 」は3個 、「+」は3個

と、ちゃんとなっていますね。

 このことは、道順でいうと
とちゅう1度もそんをしない、つまりず〜っと上の方にいるってことです。

 もう、何に何を対応させればいいか、わかりましたね。

 つぎのようになります。

 

(((+++

((++

((++

((++

 


● オイラーの三角形分割問題 ●

 カタランよりも先に、オイラーという数学者が
こんなことを考えました。

     n角形を三角形に分ける方法は何通りあるだろうか

 そして、ちゃんと答えをみつけたのです。

 それは、5角形なら、

     (((a+b)+c)+d)

     ((a+(b+c))+d)

     ((a+b)+(c+d))

     (a+((b+c)+d))

     (a+(b+(c+d)))

と同じ、つまり5通りあるのです。

 

 さあ、このことをみていきましょう。

 ところで、「ベクトル」って知っていますか。

 中学生なら、理科の時間に「力の平行四辺形」として習っているかも。
 高校生なら、数学の時間にやるはずですよ。

 ここでは、ただの数の

     a+b+c+d

のたし算の順番ではなく、ベクトルのたし算の順番を考えます。

 

     

 たし算をすると、対角線(たいかくせん)で三角形に分けられます。

 すると、つぎのようになります。

 

(((a+b)+c)+d)

((a+(b+c))+d)

((a+b)+(c+d))

(a+((b+c)+d))

(a+(b+(c+d)))

 5角形のばあいは、頂点(ちょうてん)の個数と同じになってしまい、
つまらなかったですね。

 ぜひ、6角形あたりでやってみてください。

  のつぎのカタラン数というと

     1 , 1 , 2 , 5 , 14 , 42 , ・・・

ですから、14 です。

 6角形で、ちゃんと14通りみつかりましたか。

 


● おつりの問題 ●

 カタラン数は、いろいろなところで出てきます。

 そのひとつが、「おつりの問題」です。

 たとえば・・・

 
 【問題】
       6人からお金をあつめます。
       1人50円ずつあつめます。
       3人は50円玉、3人は100円玉をもってきました。
       おつりがたりなくならないような、
       お金のあつめ方の順番は何通りありますか。

       ただし、お金の金額(きんがく)のみを考え、
       だれからあつめたのかは、くべつしないものとする。

 

 かんたんですね。

     「50円玉」 を 「( 」
     「100円玉」 を 「+」

に対応させれば、同じ問題になります。

 道順でいえば、とちゅう1度もそんをしない、
つまりず〜っと上の方を通っていく行き方の個数です。

 だから、さっきと同じ 通りです。

     (((+++     50 50 50 100 100 100

     ((+(++     50 50 100 50 100 100

     ((++(+     50 50 100 100 50 100

     (+((++     50 100 50 50 100 100

     (+(+(+     50 100 50 100 50 100

 

 ところで、このホームページの「カタラン数(1)」で
こんなことを考えました。

 

     

 

 ぜんぶで20通りのうち、ついている「わりあい」が

     3/3 つまり ず〜っと上       は 5通り
     2/3 つまり 2/3上 で 1/3下  も 5通り
     1/3 つまり 1/3上 で 2/3下  も 5通り
     0/3 つまり ず〜っと下       も 5通り

でした。

 これを、今の「おつりの問題」にあてはめると

     おつりがたりなくならない       は 5通り
     1回おつりがたりなくなる       も 5通り
     2回おつりがたりなくなる       も 5通り
     3回おつりがたりなくなる       も 5通り

となってきます。

 じっさい、こうなりますね。

 

<0回>

50 50 50 100 100 100

50 50 100 50 100 100

50 50 100 100 50 100

50 100 50 50 100 100

50 100 50 100 50 100

 

<1回>

50 50 100 100 100 50

50 100 50 100 100 50

50 100 100 50 50 100

100 50 50 50 100 100

100 50 50 100 50 100

 

<2回>

50 100 100 100 50 50

50 100 100 50 100 50

100 50 50 100 100 50

100 50 100 50 50 100

100 100 50 50 50 100

 

<3回>

100 100 100 50 50 50

100 100 50 100 50 50

100 100 50 50 100 50

100 50 100 100 50 50

100 50 100 50 100 50

 

 

 カタラン数は、ほかにもいろいろ出てきます。

 たとえば、コンピュータのプログラミングなどで、
(  )の個数があわないと、エラーになりますね。

 この正しい (  ) のつけ方(?)もカタラン数になります。

 たとえば、(  )を3つ使うばあいは、「+」を「) 」におきかえるだけです。

     (((+++    ・・・   ( ( (   ) ) )

     ((+(++    ・・・   ( ( )   ( ) )

     ((++(+    ・・・   ( ( ) )  (  )

     (+((++    ・・・   (  ) ( (  ) )

     (+(+(+    ・・・   (  ) (  ) (  )

 

 カタラン数がでてくるのは、まだまだ、たくさんあります。

 いちど、さがしてみてください。

 


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