ユークリッドの互除法

● ユークリッド ●

 ユークリッドといったら、「ユークリッド幾何」で有名ですね。

 「ユークリッド幾何」なんて知らな〜いって?
 ご心配なく!みなさんが学校で習ったふつうの幾何のことです。
 こんなに長きにわたって、それも世界中で学ばれるなんて、
きっとユークリッドも考えてもいなかったでしょうね。
 (もっとも、「ユークリッド幾何」でない「幾何」が出てくるなんて
もっと考えていなかったかもしれないけど・・・・・)

 でも、こんなことは、もっと予想してなかったでしょうね。
 やがてコンピュータの時代がきて、
「ユークリッドの互除法(ごじょほう)」が注目をあびる・・・。

 さて、その「ユークリッドの互除法」っていうのは、何でしょう。

 「除法(じょほう)」というのは、「わり算」のことです。
 ですから、「互除法」というのは、お互いにわり算していく方法のことです。

 でも、お互いにわり算していって何が出てくるの?

 それは、2つの数の最大公約数(さいだいこうやくすう)です。

 


● 最大公約数 ●

 約数(やくすう)というのは、もう知っていますね。
( <お勉強>の「素数と素因数分解」をぜひ見てください。)

 18÷2=9 ですから 2は18をわりきります。
 このとき、2 を 18 の約数というのです。
 そして、18=2×9 となります。

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 18÷4=4 あまり 2 ですから、4は18をわりきりません。
 ですから、4は18の約数ではありません。
 そして、18=4×4+2 となります。

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 では、公約数(こうやくすう)というのは何でしょう。

 たとえば、12 と 18 の公約数というのは、
12の約数でもあるし、18の約数でもあるものです。

 

《 1 》

 12÷1=12 , 18÷1=18 ですから、1 は 12と18の公約数です。

 たてが12、横が18の長方形は、一辺が1の正方形のタイルでしきつめられます。

 これは、あたりまえですね。

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《 2 》

 12÷2=6 , 18÷2=9 ですから、2 は 12と18の公約数です。

 たてが12、横が18の長方形は、一辺が2の正方形のタイルでしきつめられます。

 

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《 3 》

 12÷3=4 , 18÷3=6 ですから、3 は 12と18の公約数です。

 たてが12、横が18の長方形は、一辺が3の正方形のタイルでしきつめられます。

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《 6 》

 12÷6=2 , 18÷6=3 ですから、6 は 12と18の公約数です。

 たてが12、横が18の長方形は、一辺が6の正方形のタイルでしきつめられます。

 

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 このようにして、1,2,3,6 が 12と18の公約数であることがわかりました。

 じつは、素因数分解をつかうとすぐにわかります。

    12=2×2×3
    18=   2×3×3

 じっと見比べて、 の他は 2,3,2×3 ですね。

 そして、公約数の中で最大のものを最大公約数といいます。

 この最大公約数を、お互いにわり算していく方法で求めるのが
「ユークリッドの互除法」です。

 えっ、素因数分解でやればいいって?
 でも素因数分解がかんたんでないことは、暗号に利用されるくらいなのですよ。

 


● ユークリッドの互除法 ●

 引き続き、12と18で話をすすめましょう。

 問題は、たてが12、横が18の長方形を、
一辺が最大いくらの正方形のタイルでしきつめられるか、ということです。

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 そのとき使うのが、わり算のたしかめ算(?)です。

   18÷12=1 あまり 6
  (18個を12人でわけると1人1個で6個あまる)

 これのたしかめは、

  18=1×12+6 
  (1人1個ずつ12人にわけると、あまった6個もあわせれば、もとの18個だ)

 このとき、18と12の最大公約数が、
12と6の最大公約数と同じだというのがポイントです。

 なぜなら、
  18=1×12+6 から、12と6をわりきる数(約数)は18もわりきるし、
   6=18−1×12 から 18と12をわりきる数(約数)は6もわりきる
からです。

 わかりますよね。
 だって、何人かでちょうど分けられるおかしの皿が2皿あって、
あわせて1皿にしたら分けられなくなってしまう、なんてことないですよね。

 12と18の最大公約数を (12,18) と書くことにすると
   (12,18)=(12,6)
となります。

 

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 図でいうと、
   たてが12、横が18の長方形をしきつめる問題が
   たてが12、横が6の長方形をしきつめる問題になったのです。

 今度は
   12÷6=2 あまり 0
となり、(12,6)=(0,6) となります。
 もちろん、0 と 6 の最大公約数は 6 です。

 

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 けっきょく、(12,18)=(12,)=(,6)=6

となり、12と18の最大公約数は 6 とわかりました。

 (注意)ふつうは、(12,18)=(12,)=6 と書きます。

 

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● 互いに素 ●

 今度は 8 と 5 の最大公約数をみてみましょう。

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   8÷5=1 あまり 3

 ですから、(,5)=(,5)

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   5÷3=1 あまり 2

 ですから、(3,)=(3,

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   3÷2=1 あまり 1

 ですから、(,2)=(,2)

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   2÷1=2 あまり 0

 ですから、(1,)=(1,

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 けっきょく、(8,5)=(3,5)=(3,2)=(1,2)=(1,0)=1

となり、8と5の最大公約数は 1 とわかりました。

 (注意)ふつうは、(8,5)=(3,5)=(3,2)=(1,2)=1 と書きます。

 

    
    
    
    
    

 

 8 と 5 のように、その最大公約数が1であるとき、
つまり素因数分解すると

   8=2×2×2
   5=5

のように、まったく共通の素因数をもたないとき、
8 と 5 は互いに素(たがいにそ)といいます。

 


● 1次不定方程式 ●

 さて、ユークリッドの互除法をもちいて、

  12X + 18Y = 6  や

   8X + 5Y = 1

の X や Y にあてはまる数の(無限にたくさんあるうちの)ひとつを求めてみましょう。

 

《 12X + 18Y = 6 》

 さいしょに、両辺を最大公約数の6でわってしまって、

  2X + 3Y = 1 

にするのがふつうでしょうが、(そうすれば、2と3は互いに素です)
今回はせっかくですからそのままやりましょう。

   18÷12=1 あまり 6 , これから 18=1×12+6
                    つまり  −1×12+18=6
                       (−1)×12+×18=6

 X=−1,Y=1 とすればいいですね。

 えっ、あたりまえすぎて気にいらないって?
 そういう人は

   12=6×2      だから 12×=6×2×
   18=6×  3    だから 18×=6××3

であることを頭において

 X=−1+ ,Y=1− とすれば、
  =2       =−1

   (−1+3)×12 + (1−2)×18
  =(−1)×12 + 3×12 + 1×18 −2×18
  =(−1)×12 + 1×18
  = 6

 ほかにどんな数がXとYにあてはまるか、やってみてね。

 

《 8X + 5Y = 1 》

   8÷5=1 あまり 3 , これから 8=1×5+3  ・・・ (1)

   5÷3=1 あまり 2 , これから 5=1×3+2  ・・・ (2)

   3÷2=1 あまり 1 , これから 3=1×2+1  ・・・ (3)

 

 まず、(3)から  3 − 1×2 = 1  ・・・ (4)

 次に、(2)から  5 − 1×3 = 2 ・・・ (5)

 (5)を(4)に代入すると

        3 − 1×(5−1×3) = 1
        2×3 −1×5 = 1 ・・・ (6)

 次に、(1)から  8 − 1×5 = 3 ・・・ (7)

 (7)を(6)に代入すると

        2×(8−1×5) − 1×5 = 1
        ×8 +(−3)×5 = 1

 X=2 , Y=−3 があてはまる数のひとつです。

 ほかにどんな数がXとYにあてはまるか、やってみてね。

 


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