平均と平方根

● いろいろな平均 ●

 平均(へいきん)にもいろいろあるって知っていますか。

 身長の平均、体重の平均、テストの点数の平均・・・
という話では、もちろんありません。

 平均するしかたがいろいろあるのです。

 


● 相加平均 ●

 まずは、ふつうに使われる相加平均(そうかへいきん)です。

 「加(か)」 というのは 「加法(かほう)」 で 、たし算のことです。
 相加平均というのは、たし算の平均のことです。

 「わりかん」って知っていますよね。
 これを例にとって考えてみましょう。
 3人で、300円の物と、500円の物と、700円の物を食べたとします。
 みんなで食べたので、わりかんということになりました。
 さて、いくらはらいますか。

 3人とも □(円)はらうとしましょう。

    □+□+□ = 300+500+700  ・・・・・・ (1)

        □×3 = 300+500+700

               300+500+700
          □ =       3

             = 500

 みんな 500(円)はらうことになりました。

 このように、みんないっしょに □(円)としたときに、
(1)ように、たし算していっしょにするのを、たし算の平均
つまり、相加平均というのです。
 (ほかの人数でも、どうやって平均するのかわかりますね。)

 


● 相乗平均 ●

 高校になって習うのが相乗平均(そうじょうへいきん)です。

 「乗(じょう)」 というのは 「乗法(じょうほう)」 で 、かけ算のことです。
 相乗平均というのは、かけ算の平均のことです。

 今度は、物価(ぶっか)の上昇(じょうしょう)の例で考えてみましょう。
 最初の1年間で、物価が2倍になりました。
 次の1年間で、物価が4倍になりました。
 その次の1年間で、物価が8倍になりました。
 (大変なインフレです。今はデフレらしいですから、現実ばなれしてますね。)
 さて、1年間につき平均して物価は何倍になったでしょうか。

        

 3年間とも □倍になったとしましょう。

    □×□×□ = 2×4×8   ・・・・・・ (2)

            = 64

 さて、4×4×4=64 ですから、□にあてはまる数は 4 です。

          □ = 4

 平均して1年間につき物価は4倍になりました。

 このように、どの年もいっしょの □倍 としたときに、
(2)のように、かけ算していっしょにするのを、かけ算の平均
つまり、相乗平均というのです。
 (ほかの年数でも、どうやって平均するのかわかりますね。)

 


● 調和平均 ●

 今度は、調和平均(ちょうわへいきん)です。

 今度は、仕事にかかる時間の例で考えてみましょう。
 同じ仕事をするのに、それぞれ次の時間かかったとします。

    Aさん は  4 (時間)

    Bさん は  2 (時間)
             4 
    Cさん は  3  (時間)  (つまり 80分) 

 みんな仕事をするスピードがちがうのですね。
 それぞれの仕事をするスピードを、
1時間あたり全体のどれだけすすむかであらわすと

             1 
    Aさん は  4  (/時間) 

             1 
    Bさん は  2  (/時間) 

             3 
    Cさん は  4  (/時間) 

 さて、この仕事の3倍を3人でいっしょにすると何時間かかるでしょうか。

 かかる時間を □時間 とします。
 そうすると、1時間あたりの仕事のすすむスピードを考えると、次のようになります。

      1    1    1     1    1    3 
    □ + □ + □ =  4 + 2 + 4     ・・・・・・ (3)

          1        1    1    3 
          □ ×3 =  4 + 2 + 4 

                   1    1    3 
            1      4 + 2 + 
             =       3                

                        3           
            □ =   1    1    3 
                   4 + 2 + 4  

                         1    1    3 
                = 3 ÷(  4 + 2 + 4 

                         6  
                = 3 ÷  4 

                = 2

 けっきょく、2時間 かかることがわかりました。

 このように、みんないっしょの □時間 としたときに、
(3)のようにしてだした平均を、調和平均というのです。
 (ほかの人数でも、どうやって平均するのかわかりますね。)

 


● 背理法 ●

 どの平均の出し方が一番大きい数になるかというようなお話は、
みなさんが高校生になったら学校でやりますよ。

 今回は、《エラトステネスのふるい》 のじゅんびをしましょう。
 ( 《エラトステネスのふるい》 がどんなものかは、また今度のおたのしみ。)

 まずは、相加平均で練習します。本番は相乗平均です。

■ 相加平均

 2(人?)の場合で考えます。

     2 + 8 = 5 + 5 ですから、
     2 と 8 の 相加平均 は 5 です。
     このとき 2 は 5 より小さく、 8 は 5 より大きいです。

     4 + 6 = 5 + 5 ですから、
     4 と 6 の 相加平均 も 5 です。
     このとき 4 は 5 より小さく、 6 は 5 より大きいです。

 では、 「 ○ と □ の 相加平均 が 5 のとき、
○ と □ のどちらかは 5 より小さい。」 といえるでしょうか。

 いえませんね。

     5 + 5 = 5 + 5 ですから、
     5 と 5 の 相加平均 も 5 ですが、
     このとき 5 は 5 と等しく、 5 も 5 と等しいからです。

 こう直しましょう。
 「 ○ と □ の 相加平均 が 5 のとき、
○ と □ のどちらかは 5 以下である。」 

 なっとくできな〜い!という人には、こう説明するのです。

 だって、もし ○ も □ も 5 より大きいと
      ○ + □ は 10 より大きくなって
      ○ + □= 5 + 5
矛盾(むじゅん)するでしょ・・・と。

 このように、もし・・・・ならば矛盾する、という論法を背理法(はいりほう)といいます。
 (もちろん、相加平均が 5 でなくて 他の数でも同じですね。)

 

■ 相乗平均

 今度も、2(年?)の場合で考えます。

     4 × 9 = 6 × 6 ですから
     4 と 9 の 相乗平均 は 6 です。
     このとき 4 は 6 より小さく、 9 は 6 より大きいです。

 あっ、いけない!

     4 × 9 = (−6) × (−6) ですから
     4 と 9 の 相乗平均 は −6 って考える人もいるかも・・・。

 そんなことのないように、これからは正の数で考えることにしましょう。

 続けます。

     3 × 12 = 6 × 6 ですから
     3 と 12 の 相乗平均 は 6 です。
     このとき 3 は 6 より小さく、 12 は 6 より大きいです。

 さっきと同じように

     6 × 6 = 6 × 6 ですから
     6 と 6 の 相乗平均 は 6 ですが、
     このとき 6 は 6 と等しく、 6 も 6 と等しいです。

 そこで、こんなことがいえそうです。

 「 ○ と □ の 相乗平均 が 6 のとき、
○ と □ のどちらかは 6 以下である。」 

 なっとくできな〜い!という人には、背理法で説明してあげてね。
 (もちろん、相乗平均が 6 でなくて 他の数でも同じですね。)

 


● 開平 ●

 ところで、1 と 5 の相乗平均って何ですか。

     □×□ = 1×5

 さて、この□にあてはまる数は何でしょう。

     2×2 = 4

 ですから、2より大きく、

     3×3 = 9

 ですから、3より小さい数です。つまり、
□にあてはまる数は、2より大きく3より小さい数です。

 さあ、□×□ = 5 となる数を求めてみましょう。
 図でいうと、正方形の一辺の長さを求めることです。

     

 まず、2×2=4 だけ正方形にならべます。
 そして、あまった1個を100等分します。
 大きいのは 1 で、小さいのは 0.01 です。

 

       

 ここまでは、こんなふうに計算します。

 まず、

              □
         □   /
             4  
         ○    100

 ここで、□には 2×2 の 2 が入ります。
      5 の下の 4 は 2×2=4 の 4 です。
      その下の 100 は あまった1個を100等分した
      0.01が100個の 100 です。

 次に 0.01を10ずつかたまりにして(0.01×10=0.1)
これを正方形のまわりにならべます。
 さっき、2×2=4 だけ正方形にしてならべたので、
そのまわりの 2+2=4 ずつならべていきます。

      

 計算の続きはこうなります。

              2
            /
             4  
         □   100
          □

 ここで、□の中の数は 2列 の 2 です。
 さらに、角のところに 2×2 ならべます。
 0.01 を 40×2 と 2×2 のあわせて 84個 ならべました。

              2、2□
         2   / 5   
         2    4  
             100
          2    84   
         44□   1600
           □

 

 あまった 16個の 0.01 を さらに100等分して
1600個の 0.0001 を正方形のまわりにならべていきます。

 計算の続きはこうなります。

              2、2360679
         2   / 5   
         2    4  
         42    100
              84   
         443   1600
           3   1329  
         4466   27100
            6   26796  
         44720    30400
             0        0  
         447206   3040000
              6   2683236  
         4472127   35676400
               7   31304889  
         44721349   437151100
                9   402492141  

 いちおう、このへんでやめておくと
けっきょく、□×□ = 5 となる数は

    □ = 2.2360679・・・・・

となることがわかりました。
 じつは、この「・・・・」のところは、けっして同じ数のくりかえし、たとえば

         2.2360679679679・・・・・

のようにはなりません。
 なぜなら、もし同じ数のくりかえしになると、
<Q&A>の「0.989898・・・・は?」でやったようにして、
分数で書けることになります。そこで

             △ 
        □ = ○

とおき、(ただし △と○は約分しておきます。もちろん○も△も整数です。)
さらに、□×□を計算すると

              △×△ 
      □×□ =  ○×○

 ここで、□×□ = 5 でしたから、

              △×△ 
         5 =  ○×○

 これから、

   5×○×○ = △×△

となります。ここで、5×○×○は、5で何回われるかを考えると、奇数回です。
 ところが、△×△は、5で何回われるかを考えると、偶数回です。
 (つまり、5×○×○ と △×△ の素因数分解を考えているのです。)
これって、矛盾してますよね〜。(背理法です)

 


● 平方根 ●

 さて、この □×□ = 5 となる数は、

    □ = 2.2360679・・・・・

となって、同じ数のくりかえしにならない、つまり循環(じゅんかん)しない
ということがわかりました。

 でも、下の図の正方形の一辺の長さ□を、
いちいち 2.2360679・・・・・ というのも大変です。

下の方の大きい正方形の面積は
  3×3=9
三角形は
  1×2÷2=1
三角形4つで
  1×4=4
だから、中の正方形の面積は
  9−4=5
となり、
  □×□=5
(ならべかえて、真ん中の図にすると
すぐにわかりますね。
 真ん中の2つの正方形は、三平方の定理を表しています。)

 そこで、□×□ = 5 の□にあてはまる数を、
正の数と負の数と2つあるので、
正の数の方を / (ルート5)、負の数の方を −/ と書いて、
この2つを 5の平方根(へいほうこん) とよんでいます。

 平方というのは、2乗 のことで、□×□ のように□を2回かけることです。
ついでに、立方というのは 3乗 のことで、□×□×□ のように□を3回かけることです。

 というのは、方程式の答えのことで、最近はということが多いです。
 今の場合は、方程式

    □×□ −5 = 0

の解(根)のことです。

 いっしょうけんめい求めたことは、次のようになります。

    / =  2.2360679・・・・・

         (ふじさんろくオームなく・・・・・)
         (富士山麓オーム鳴く(泣く?)・・・・・)

 そういえば、そんな名前の宗教団体に泣かされた事件がありましたね。
 これも予言のたぐいだったのかも・・・・・。

 


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