メビウスの帯

● 結晶で「メビウスの帯」 ●

 さいきん、こんな記事を新聞でみかけました。

世界初、結晶でメビウスの帯」

 それは、こんな内容(ないよう)でした。

 結晶(けっしょう)は細長くはできても、
まげたりねじったりするのは不可能(ふかのう)だと思われていたそうです。

 その不可能だと思われていたことを、やってのけたというのです。

 むずかしいことはぬきにすると、こんなことらしいのです。

 

帯(おび)のような細長い結晶をつくって、

これを球状のものにまきつけ、

さらに180度のひねりをくわえて、

なかの球状のものをぬきとれば、

はい、できあがり!

 

 もちろん、そんなにかんたんなはずがありません。

 まず、帯のような細長い結晶というのは、
とじた石英管の中で、セレンとニオブを約740度に加熱して作った、
「3セレン化ニオブ」の結晶で、うすくてまげやすいものだそうです。

 しんとなる球状のものは、管内で温度差をつけて作った「セレン」滴だそうです。

 まきつかせるには、表面張力(ひょうめんちょうりょく)を利用したそうです。

 それで、どうやって180度ねじったかって?
 どうやって、そのあと、しんの「セレン」滴をとりのぞいたかって?

 もちろん(!)、わたしにはさいしょっから、なにがなんだかかさっぱり・・・。

 ・・・ということで、これは北海道大学工学部の
丹田聡助教授(固体物理学)らの研究グループの成果だということですから、
くわしくは、そちらへ・・・。

 


● 0回ねじりの輪 ●

 さて、それではいよいよ(?)さんすう・数学のお勉強です。

 今回は、もしかしたら、
小学生どころか、保育園(ほいくえん)の子どもさんでもだいじょうぶかも・・・。

 こんどの七夕(たなばた)かざりに、ピッタリかもしれませんね。

 それでは、できたら表(おもて)と裏(うら)の色がちがう
紙テープを用意してください。

 ふつうのメビウスの帯だけなら、1回しかねじらないのでいいのですか、
なんてったって、このホームページは、そこでおわるはずがありません(?)

 何回ねじったかよくわかるように、
・・・というよりは、できあがったときのみばえというのがありますからね。

 それで、さいしょから、
表(おもて)と裏(うら)の色をちがわせておくといいのでは・・・
というだけのことです。

 

<0回>

 

 

 では、まずは0回ねじりです。

 はやい話が、ふつうの輪(わ)です。

 そのままねじらずに、AはCと、BはDとくっつけます。

 もちろん、まん中をず〜っと1まわりすると、
ちゃんと表だけ通って、もとのところへもどれます。

 そして、そのたどったところ、
つまり、まん中をはさみで切っていくと、ちゃんと2つの輪ができます。

 立体のままでは、わかりにくいので、
折り紙(おりがみ)のように、ぺったんこにおりまげて作ってみましょう。

 それを、色紙(しきし)にはりつけて、額(がく)に入れ、
芸術作品(?)として、かざってみるのもすてきですね。

 

 でも、もちろん、0回ねじって0角形・・・なんて、作れるはずもありません。

 

 そこで、とりあえず4角形にして、
上にねじったら1回、下にねじったら−1回とかぞえることにします。

 左下から時計回り(とけいまわり)にかぞえると、

     1+(−1)+(−1)+1=0

 これぞ0回ねじり・・・といえなくもなさそうですね。

 もちろん、おりまげ方はいろいろあります。

 たとえば、

     1+(−1)+1+(−1)=0

 ですから、この計算にあったおりまげ方というのもありますよね。

 さて、これをまん中で切っていくと、こうなります。

 

 どうということもない、おなじく0回ねじりの輪が2つです。

 


● メビウスの帯 ●

<1回>

 

 では、次は1回ねじりです。

 これが、かの有名なメビウスの帯です。

 ねじるときは、右ねじりか左ねじりかをきめておくといいですね。

 さあ、1回ねじって、AはDと、BはCとくっつけます。

 もちろん、1回ねじって1角形・・・なんて、作れるはずもありません。

 そこで、とりあえず3角形にして、おなじように
上にねじったら1回、下にねじったら−1回とかぞえることにします。

     1+(−1)+1=1

 

 

 今度は、まん中をず〜っと1まわり(表と裏で2まわり?)すると、
表も裏も全部通って・・・というよりは、表も裏もくべつできなくなって、
もとのところへもどれます。

 ですから、そのたどったところ、
つまりまん中をはさみで切ると、今度は1つの輪ができます。

 さて、それでは、これは何回ねじりの輪でしょうか。

 4回ねじっていますから、4回ねじりの輪ですね。

 ちなみに、左の図も右の図も色のつけ方がちがうだけで、
図形としては同じですね。

 


● メビウス風の帯 ●

<2回>

 ふつうのお話では、メビウスの帯を2つに切ってできた輪を
さらにまん中で切ってみますね。

 つまり、4回ねじりの輪を切るのです。

 でも、お話の順番(じゅんばん)といたしましては、
その前に、2回ねじり、3回ねじりですよね〜!

 ・・・ということで、つぎは2回ねじりの輪といきましょう。

 とくに名前はないので、
まとめてメビウス風の帯とでもよぶといいですね。

 さあ、2回ねじって、AはCと、BはDとくっつけます。

 表は表と、裏は裏とくっつけることになります。

 もちろん、2回ねじって2角形・・・なんて、作れるはずもありません。

 そこで、とりあえず4角形にして、おなじように
上にねじったら1回、下にねじったら−1回とかぞえることにします。

     1+(−1)+1+1=2

 

 さあ、これをまん中で切っていくとどうなるでしょうか。

 

 どうということもない、おなじく2回ねじりの輪が2つです・・・とはいかなくって、
その2つの輪が、結ばれてしまっているのです。

 ちなみに、これは「結び目(むすびめ)」とはいわずに、
「絡み目(からみめ)」といいます。

 これは、2本の2回ねじりの輪が、からんでいるのですね。

 

<3回>

 こんどは、3回ねじりの輪です。

 3回ねじって、表は裏と、裏は表とくっつけます。

 こんどは、3回ねじって3角形が・・・、ちゃ〜んと作れます。
 (ああ、よかった!)

 

 さあ、これをまん中を切っていくとどうなるでしょう。

 やっぱり、1本のつながった輪に、なることはなるのですが・・・。

 この1本のつながった輪は、どんなものでしょうか。

 じつは、6回ねじりのたんじゅんな輪・・・ではなくって、
「結び目(むすびめ)」があるのです。

 

 まん中にできたこの結び目は、「三つ葉結び目」とよばれているものです。

 三つ葉結び目

 

 

<4回>

 こんどは、4回ねじりの輪です。

 4回ねじって、表は表と、裏は裏とくっつけます。

 こんども、4回ねじって4角形が・・・、ちゃ〜んと作れます。

 

 さあ、これをまん中で切っていくとどうなるでしょう。

 やっぱり、4回ねじりの輪が2つです・・・とはいかなくって、
その2つの輪が、2回もからんでしまっているのです。

 

 

 

<5回>

 いよいよ5角形です。

 このホームページでは、おなじみの5角形です。

 わくわく、どきどきですね(?)

 さあ、奇数回(きすうかい)ねじるのですから、
表と裏、裏と表をくっつけることになります。

 表と裏をくっつけたのですから、
これをまん中で切っていくと、つながった輪ができそうです。

 さあ、どうでしょう。

 

 やっぱり、まん中に、しっかり「結び目」ができていますね。

 「五つ葉結び目」とはいわないのかもしれませんが・・・。

 この図形は・・・

 そう、あのペンタグラムです。

 あのピタゴラス教団のシンボルマークです。
 (ちょっと角がとれていますが・・・)

 

 

<6回>

 こんどは、6回ねじりの輪です。

 6回ねじって、表は表と、裏は裏とくっつけます。

 さあ、これをまん中で切っていくとどうなるでしょう。

 もちろん、6回ねじりの輪が2つです・・・とはいかなくって、
その2つの輪が、3回もからんでしまっているのです。

 

 


● 表と裏 ●

 こうやってみていくと、

     0回、2回、4回、6回

のような偶数回(ぐうすうかい)と、

     1回、3回、5回

のような奇数回(きすうかい)では、
ずいぶんちがっていますね。

 

 偶数回では、まん中で切っていくと

     からみあった2本の輪 (ただし、0回ねじりはからみあわない)

 奇数回では、まん中で切っていくと

     結び目のある1本の輪 (ただし、1回ねじりは結び目がない)

になります。

 

 どうして、偶数回と奇数回で、こうもかわってくるのかは、
けんとうがつきますね。

 だって、そもそも、偶数回では表と表、裏と裏をくっつけ、
奇数回では表と裏、裏と表をくっつけたのですから・・・。

 ところで、さんすう・数学では
ややこしいものを、よりかんたんなものにしようという方が、ふつうです。

 ややこしいもの・・・
それは、切っていってできた、「結び目」や「絡み目」のある方です。

 よりかんたんなもの・・・
それは、切るまえの方です。

 それなら、かんたんにするには、
はんたいに、セロテープでくっつけていけばいいはずですよね。

 でも、これって、りくつはそうでも、
じっさいに、やってみようとは・・・。

 

 


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