パスカルの三角形

● 和の法則 ●

 まわり道しないで、左下から右上までいく道順(みちじゅん)は何通り?

 そう、6通りですね。

 では、下の図では何通りかな?

 

 

 高校生なら、ワンパターンで(?)パッと答えをだすかもしれませんね。
 でも、こんなの小学生だってできるのです。

 といっても、ちょくせつ数えるのはたいへんです。
 そういうときは、ちょっとかんたんな場合でやってみるのです。

 下の図で、 は何通りかと考えてみます。

  というのは、そこまでいく道順は6通りということで、
これはさっきやりましたね。

 4 というのも数えてあったとしましょう。

 そうすると、 に行くには、どちらかを通らないといけませんから、
(左から右へ行く)こんな図と同じことですね。

 

 これなら、

     64=10

で、あわせて 10通り です。

 たし算の答えのことを和(わ)というので、和の法則とよばれています。

 そうすると、左下の 1 から どんどんたしていけば、
数えまちがわずに(たし算をまちがえなければ)答えがでますね。

 どうなりましたか。

 ちゃんと、3432通り とでましたか。
 (高校ではもっとうまく数える方法を勉強しますよ。)

 さて、この表のななめの数をたしてみましょう。

     1=2 
     1+1=2 
     1+2+1=2 
     1+3+3+1=2 
     1+4+6+4+1=2 
     1+5+10+10+5+1=2 

 いつも、2を何回かかけた数になっています。

 こうなるわけがわかりますか。

 それは、たとえば

     1+3+3+1=2 

というのは、(小さい正方形の一辺を1歩とすれば)
3歩でいけるところを数えているだけなのです。

 それは、図でいうと 1,3,3,1 のところに行く方法ですから、

     1+3+3+1 (通り)

 でも、1歩ごとに上へ行こうか右に行こうかと考えれば

     2××2=2 (通り)

となるからです。

 こちらは、かけ算の答えのことを積(せき)というので、積の法則とよばれています。

 


● パスカルの三角形 ●

 いままで考えてきた道順の数(とその出し方)は、
パスカルの三角形として、とっても有名です。

 ただし、三角形というくらいですから、(このままではパスカルの正方形!?)
ちょっと回転(かいてん)させるのです。

 

 では、パスカルの三角形をきちんとかいてみましょう。

                           
                         1   1
                       1   2   1
                     1   3   3   1
                   1   4   6   4   1
                 1   5  10  10   5   1

 さて、2項定理でこれらの数が出てくるのが、とっても有名です。

 こんなことでしたね。

  (a+b) = 

  (a+b) = a + 

  (a+b) =  + ab +  

  (a+b) =  + b  + ab +  

  (a+b) =  + b +  + ab +  

  (a+b) =  + b + 10 + 10 + ab +  

 では、どうしてこんなところに道順の数がでてくるのでしょうか。

  (a+b) =  + b  + ab +  

で、みていくことにしましょう。

  (a+b) = (a+b)(a+b)(a+b)

 これを展開(てんかい)すると、
それぞれの「かっこ」の中からaかbを取り出してきて、かけたものが出てきます。

 ですから、たとえば ab なら、

      (+b)(+b)(a+) の aab は ab 
      (+b)(a+)(+b) の aba も ab 
      (a+)(+b)(+b) の baa も ab 

となって、全部で b が出てきます。

 これを、パスカルの三角形(正方形!?)に翻訳(ほんやく)するのに、

      というのを 道で上にいくこと
      というのを 道で横にいくこと

と考えると、

      (a+b)(a+b)(a+b)

というのは、1歩ごとに上へ行こうか右に行こうかと考えながら3歩いくことになります。

 

 

 そこでは、さっきの ab というのは、上に2歩、横に1歩で行く道順で、
具体的には

      aab ,aba ,baa 

通りということになります。

 さっきは、かけ算の順番を入れかえるとどれも ab になって
この3つでb が出てきました。

 今度は、この3通りのどの行き方も着いた所が同じ場所で、
そこに  と書きこんだのです。

 この通りの  などを書きならべたのがパスカルの三角形ですから、
二項定理そのものということになるのですね。

 


● フィボナッチ数 ●

 今度は、傾き(かたむき)をちょっとかえたななめの数をたしてみましょう。

 

     
     
     1+1=
     1+2=
     1+3+1=
     1+4+3=
     1+5+6+1=13
     1+6+10+4=21

 

 おぼえていますか。

    1,1,2,3,5,8,13,21

 これは、<お勉強>の「黄金数」や「フィボナッチ数」でやった
フィボナッチ数ですね。

 フィボナッチ数が、このパスカルの三角形(正方形!?)に出てくることは
よく知られています。

 図をたどっていくと、
1以外は)1つ1つが前の数とその前の数をあわせた数になっているのだから
これらをあわせたって、そうなるなって読みとれますね。

 前の数とその前の数をあわせた数というと、
そう、フィボナッチ数です。

 いちおう計算でたしかめて(?)おきましょう。
 (べつに分数の分子を見なくても、その横の筆算だけでいいのですが・・・)

        1    
     1+-- = ------
        1     1

 

         1                  
     1+------ = --------  ここで  +)   
        1+1     1+1            

 

        1+1    3+1          
     1+------ = --------  ここで  +)   1+1
        1+2     1+2            3+1

 

        1+2     4+3          3+1
     1+-------- = --------  ここで  +)   1+2
       1+3+1    1+3+1          4+3

 

       1+3+1   5+6+1          4+3
     1+-------- =------------  ここで  +)  1+3+1
       1+4+3    1+4+3           5+6+1

 

        1+4+3     6+10+4          5+6+1
     1+------------ =--------------  ここで  +)  1+4+3
       1+5+6+1    1+5+6+1          6+10+4

 


● 「階段登り」と「畳敷き」 ●

 さて、計算はこのへんにして、
このことを利用したフィボナッチ数の例を紹介(しょうかい)しましょう。

 まえにやった

     1+3+3+1=2 

というのは、(小さい正方形の一辺を1歩とすれば)
3歩でいけるところを数えたのでした。

 それなら、

     1+3+1=5 (ここで 5はフィボナッチ数)

は、何を数えているのでしょうか。

 

     aaaa だと 上に4歩ですが、
     aab  だと 上に2歩、横に1歩で あわせて 3歩
     bb   だと 横にたったの 2歩 です。

 でも、もし bの1歩 が aaの2歩 と同じと考えられるようなときには、

     aaaa は 4歩ですが、
     aab  も bがaaと同じなら あわせて 4歩
     bb   も bがaaと同じなら あわせて 4歩 です。

 それなら、bの1歩 が aaの2歩 と同じと考えられるようなものには、
どんなものがあるでしょうか。

 そのような例として有名なものに
「階段登り(かいだんのぼり)」と「畳敷き(たたみしき)」があります。

 

<階段登り>

 階段(かいだん)を、1度に1段か2段で上がる方法は何通り?
といった問題です。

 下の図は4段の階段を上がる方法です。

 

 1度に2段上がることを b とすれば、
それは1度に1段上がるのを a としたときの aa と同じと考えられますから、
まさしくこの例にぴったりです。

 (ただし、0段の階段を登る方法は 1通り ということにします。)

     0段 は 通り
     1段 は 通り
     2段 は 通り
     3段 は 通り
     4段 は 通り

といったように フィボナッチ数が出てきます。

 

<畳敷き>

 昔は間口の広さにおうじて税金(ぜいきん)がかけられたそうで、
細長い家が多かったとのことです。

 それとは、何の関係もないのですが
たたみ1畳の長い方のはばで、どんどん畳(たたみ)をしいていきましょう。

 そうしたら、畳のしき方は何通り?
といった問題です。

 下の図は、畳の短い方で 4枚分 の長さになったときのしき方です。

 横にしてしくのを b とすれば、
それはたてにしてしくのを a としたときの aa と同じ長さだけ横にのびますから、
まさしくこの例にぴったりです。

 (ただし、畳の短い方で0枚分の長さのときのしき方は 1通り ということにします。)

     0枚分 は 通り
     1枚分 は 通り
     2枚分 は 通り
     3枚分 は 通り
     4枚分 は 通り

といったように フィボナッチ数が出てきます。

 

 フィボナッチ数は、自然の中にいっぱい見られるそうですが、
今回はずいぶんと人工的な例になってしまいました。


HOME(もどる)

掲載内容の無断転載、転用、編集を禁じます。(c) 小林吹代
All Rights Reserved, (c)kobayashi fukiyo , 2001