フィボナッチ列(6)

● 「しんぶんし」 ●

 「新聞紙(しんぶんし)」って、有名(ゆうめい)ですよね。

 そう!

     上から読んでも「しんぶんし」
     下から読んでも「しんぶんし」

 子どものころに、いろいろ見つけてあそびました。

 でも、このホームページのように、横書きがふつうになると

     右から読んでも「しんぶんし」
     左から読んでも「しんぶんし」

ってことになるかもしれませんね。

 英語(?)なら、

     右から読んでも「SOS」
     左から読んでも「SOS」

なんてね。

 

 ・・・ということで、今回は、
右から読んでも左から読んでも同じになる、文字列のお話です。

 


● フィボナッチ列 ●

 もちろん、まずはフィボナッチ列です。

 フィボナッチ列といっても、いろいろありましたね。

 たとえば、基本のフィボナッチ列は、
文字列のたし算からできたフィボナッチ列でした。

 (・・・といっても、このホームページの中だけのお話でしたが。)

 そこでは、さいしょに、こんなことをみてみました。

 それぞれの文字列の中のSとLの比(の値)をみたのです。

     S 

     L 

     L ・・・ Sは1,Lは1で 1:1 から 1/1

     L ・・・ Sは1,Lは2で 1:2 から 2/1

     LLL ・・・ Sは2,Lは3で 2:3 から 3/2

     LLL ・・・ Sは3,Lは5で 3:5 から 5/3

 

 これは、基本のフィボナッチ列だけでなく、
ほかもみんなこうなっていましたね。

 (ですから、これをフィボナッチ列のお約束にすればいいですね。
  もっとも、今ごろになってフィボナッチ列のお約束をするのも・・・)

 ところで、

     1/1 、2/1 、3/2 、5/3 、8/5 ・・・

というのは、黄金数の近似分数(きんじぶんすう)でした。

 つまり、1/1 、2/1 、3/2 、5/3 、8/5 ・・・ は
黄金数にどんどん近づいていったのです。

  ちなみに、つぎの近似分数を出すには、分子も分母も、
自分とその前の数をたせばよかったですね。

 さて、今回はあらたに「近い」ということにこだわった、
フィボナッチ列を考えてみましょう。

 えっ、何に近いのかって?

 もちろん「川」にです。

 傾き(かたむき)が黄金数の「青い線」を「川」にたとえるなら、

なるべく「川」に近いところを通る

ような行き方を考えようというのです。

 そうしたら、それはもちろん

     1/1 、2/1 、3/2 、5/3 、8/5 ・・・

を通りますから、りっぱな(?)フィボナッチ列ですね。

 そんな、なるべく「川」に近いところを通るようなフィボナッチ列を、
<近似(きんじ)>のフィボナッチ列とでもよぶことにしましょう。

 (・・・といっても、またまたこのホームページの中だけのお話ですが。)

 


● 対称 ●

 まずは、<近似(きんじ)>のフィボナッチ列が
どんなものになるか見てみましょう。

 (ここから、つごうにより「川」を青ではなく黒にしています。
  ど〜でもいいようなことですが・・・)

 

< 近似 >

 なるべく「川」に近いところを通るようなフィボナッチ列は・・・

 こんなフィボナッチ列です。

     S 

     L 

     LS

     

     LSSL

     LSLSLLSL

     LSLSLLSLLSLSL

     LSLSLLSLLSLSLLSLLSLSL

     LSLSLLSLLSLSLLSLLSLSLLSLSLLSLLSLSL 

 

 このフィボナッチ列を見ると、何か気づきますね。

 そう、「しんぶんし」です!

 

左から読むと・・・

右から読むと・・・

 

                     S

                     L

                    LS

                   L

                 LSSL

              LSLSLLSL

         LSLSLLSLLSLSL

  LSLSLLSLLSLSLLSLLSLSL

 

    S

    L

    SL

    L

    LSSL

    LSLLSLSL

    LSLSLLSLLSLSL

    LSLSLLSLLSLSLLSLLSLSL

 

 

 だんだん、あとの方になると(・・・というよりは、ずいぶん早めに)
ほぼ「しんぶんし」のようになってきますね。

 これって、どうしてでしょうか。

 それは、もちろん、1/1 、2/1 、3/2 、5/3 、8/5 ・・・ が
黄金数にどんどん近づいていくからです。

 あとの方になると、もうほとんど「川」のまぢかですから、
スタートとゴールを入れかえて逆向き(ぎゃくむき)に進んでも、
同じようになっているはずです。

 つまり、スタートからゴールに向かって進んでも、
ゴールからスタートに向かって進んでも、
同じようになっているはずです。

 たとえば、スタートから、
     「上右上右上上右上」と「川」に近い所を通るなら、
じゅうぶんあとの方のゴールからなら、
     「下左下左下下左下」と「川」に近い所を通るってことです。

 もっとも、どこをゴールにするかは大問題です。

 だって、スタートとゴールから、まるで鏡を見ているように

     「上」なら「下」、「右」なら「左」

といったぐあいに同時に進めてみると、まん中あたりで、のこり、

     たて方向に1つで、横方向にも1つ

となってくると、(それは、分子も分母も奇数のときですね)

     スタートからは「上」なのに、ゴールからは「左」とか、
     スタートからは「右」なのに、ゴールからは「下」とか、

ならざるをえなくなりますからね。

 ここまでをまとめると、「近道は対称(たいしょう)を好む」
なんちゃって・・・ね。

 (「自然は対称を好む」をもじっただけです。
  ちなみに、「近道」というのは、「川」に近いということで、
  道のりが短いということではありません。あしからず!)

 


● 中間近似分数(1) ●

 もっといろいろ「近道」をみてみましょう。

 (くりかえしますが、「近道」というのは、「川」に近いということで、
  道のりが短いということではありません。)

 えっ、「近道」なんて一通りだって?

 そうじゃなくって、ちがう「川」で考えようというのです。

 なにも「川」(の傾き)は、「黄金数」である必要(ひつよう)はありませんからね。

 

< /ー1 >

 黄金数は、連分数であらわすと、 ず〜っと  が続く数でした。

 それなら、連分数であらわすと、 ず〜っと  が続く数は?

 それは、前回もやりましたね。

                      1     
    1 + / = 2       1    
                  +     1    
                     + 
                           ・・・

です。

 でも、パソコンの画面が横長ということもあって、
さいしょの  だけとった数の  /−1 を考えてみましょう。

 さて、この数の近似分数は、とちゅうまで計算すると、

     1/2 , 2/5 , 5/12 , 12/29 ・・・

となります。

 ちなみに、つぎの近似分数を出すには、分子も分母も、
自分を2倍した数と、その前の数をたせばいいですね。

 そうすると、
分子が偶数なら分母は奇数、分子が奇数なら分母は偶数となって、
分子も分母も奇数になることはありません。

 だったら、どこをゴールにするかを気にしなくても、
そのうち、「しんぶんし」になりそうですね。

 

 

 さて、なるべく「川」に近いところを通るような文字列は・・・

 こんな文字列になってきますね。

     S 

     L 

     L ・・・ Sは1,Lは1で 1:1 から 1/1

      ・・・ Sは2,Lは1で 2:1 から 1/2

     SSS ・・・ Sは5,Lは2で 5:2 から 2/5

     SSSSSSSSSS ・・・ Sは12,Lは5で 12:5 から 5/12

 これって、名もない文字列です。

 さすがに、このホームページでも、いちいち名前をつけたりはしません。

 さて、同じように考えて、
さっそく、スタートとゴールから同時に進んでみましょう。

     S 

     L 

     SL 

     S 

     SLSSLS 

     SLSSSLSSLSSLSSSLS 

     SLSSSLSSLSSLSSSLSSLSSSLSSLSSSLSSLSSLSSSLS

 だんだん、あとの方になると(・・・というよりは、またしてもずいぶん早めに)
「しんぶんし」になっていますね。

 

 さて、ここで、この数の近似分数の

     1/2 , 2/5 , 5/12 , 12/29 ・・・

のほかに、どんなところを通るかを見ていくことにしましょう。

 まずは、「SLSSLS」で見てみましょう。

 もうすでに、「しんぶんし」になっているとすると、
スタートから「SLS」と行けば、ゴールからも「SLS」とくることになります。

 ということは、「SLSSLS」の2/5から、「SLS」の1/2もどった

            1
     -------- = ----
            

のところを通ることになります。

 同じように、もうすでに「しんぶんし」になっていたとしたら・・・

            3
     -------- = ----
     12      

     12      7
     -------- = ----
     2912    17

というところを通ることになります。

 さて、こうしてでてきた

     1/3  , 3/7 , 7/17 , ・・・

はどんな数でしょうか。

 それは、もとの近似分数

     1/2 , 2/5 , 5/12 , 12/29 ・・・

の(それぞれの間の)中間近似分数とよばれているものです。

 

     1/2 , 2/5 , 5/12 , 12/29 ・・・

        1/3  , 3/7 , 7/17 , ・・・

 


● 中間近似分数(2) ●

 もちろん、中間近似分数というのは、
間にたった1つだけあるというわけではありません。

 そのことを、連分数であらわすと、 ず〜っと  が続く数から、
(パソコンの画面が横長ということで、)さいしょの  だけとった数の
  (/13−3)/2 でみてみましょう。

 

                      1     
    (/13 −3)/2=        1    
                  +     1    
                     + 
                           ・・・

 さて、この数の近似分数は、とちゅうまで計算すると、

     1/3 , 3/10 , 10/33 ,  ・・・

となります。

 ちなみに、つぎの近似分数を出すには、分子も分母も、
自分を3倍した数と、その前の数をたせばいいですね。

 そうすると、こんどは分子も分母も奇数になることがあって、
どこをゴールにするかが問題になってきます。

 でもまあ、そのうち、ほぼ「しんぶんし」になるってことでいいですね。

 

 さて、1/3 と 3/10 の間の中間近似分数をみてみましょう。

            2
     -------- = ----
     10      

とまず1つ見つかりますね。でも、さらに

            1
     -------- = ----
            

と見つかります。

 ついでに、3/10 と 10/33 の間の中間近似分数もみてみましょう。

     10 3     
     -------- = ----
     3310    23

       3     
     -------- = ----
     2310    13

 

 


● 中間近似分数(3) ●

 ゴールからバックして中間近似分数を見つけたので、
なぜか、コースまでバックしてくりかえされそうに、
かんちがいしそうですね。

 でも、そんなはずはありません。

 そう、スタートとゴールから、まるで鏡を見ているように

     「上」なら「下」、「右」なら「左」

といったぐあいに同時に進むはずです。

 けっして、コースまで、
ゴールからバックして、くりかえされるのではありません。

 中間近似分数のところは、あくまでもそこを通るというだけです。

 このことを、連分数であらわすと、 ず〜っと  が続く数から、
(パソコンの画面が横長ということで、) さいしょの  だけとった数の
  /−2 で見てみましょう。

                      1     
    / −2   =        1    
                  +     1    
                     + 
                           ・・・

 ほらね。

 たとえば、右上の図の 4/17 をゴールとするコースでは、

     4/17 から 3/13 までバックするのと

     3/13 から 2/9  までバックするのとでは、

同じくりかえしですが、

     2/9 から 1/5  までバックするのとでは、

ちがっていますね。

 でも、たしかに 1/5  は通っています。

 そして、1/5  を通りながら、
「しんぶんし」になるように進んでいますね。

 じつは 17/72 をゴールとするコースもかきたかったのですが、
パソコンの画面に入りきらなかったので
中間近似分数の 9/38 までの図としてしまいました。あしからず!

 


● 中間近似分数(3) ●

 ここまで、ず〜っと  やら  やら  やら  が
つづく数ばかりやってきたので、さいごに、
1,2,1,2・・・ 
とたがいちがいにつづく数でしめくくる(?)ことにしましょう。

 

                      1     
    / −1   = 1       1    
                       1    
                       1  
                        

                           ・・・

 

 

 この図を見ると、
スタートとゴールから、まるで鏡を見ているように

     「上」なら「下」、「右」なら「左」

といったぐあいに同時に進むのはいいですが、
重なるばあいもでてきて、ややこしいですね。

 

 さて、今回の
なるべく「川」に近いところを通るような行き方はどうでしたか。

 えっ、もう「川」には近づきたくないって?

 そうそう、「よい子は、川に近づかない」でしたね。

 

 


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