ピタゴラス数(2)

● ピタゴラス数 ●

寺田恵一さまから、こんなメールをいただきました。

ピタゴラス数に関するものです。


 以前よりピタゴラス数の昇順の求め方をさがしていました。

     X=m−n , Y=2mn , Z=m+n

については、1950年頃から知っていましたが、順序が気に入らなかったのですが、

やっと1998年に偶然考えつきまして歓喜致しました。

     -----(略)-----

【 共通因数のないピタゴラス数X,Y,ZをX、Yの昇順に求める方法 】

・ Xが奇数のとき X=MN , Y=(M−N)/2 , Z=(M+N)/2

・ Xが4の倍数のとき X=MN/2 , Y=(M−N)/4 , Z=(M+N)/4

・ Xが偶数で4の倍数でないときは、Y,Zは自然数ではない

 

 1950年から1998年ですか〜

 2歳からでも50歳になってしまいます。

 おどろきました!そんな方が、本当にいらっしゃるのですね〜

 それなら、この私は、この30年間いったい何をしていたのでしょうか。

 記憶をたどるまでもなく、数学とは無縁だったような気がします。(算数には縁があったかも)

 日々の生活に、ひたすら追われていたような・・・。

 月日のたつのは、本当に早いものですね〜

 

 おっと、話をもどしましょう。

 ちなみに、

   Xが奇数のとき X=MN , Y=(M−N)/2 , Z=(M+N)/2

というのは、けっこういろいろな本にのっています。

 またここでの方法は、

   Xが奇数のときは、M,Nは互いに素であるとか

   Xが4の倍数のときは、M/2,N/2のどちらかは奇数であるとか

いろいろ省略されているように思います。

 

さて、これがピタゴラス数の昇順の求め方ですといわれても、

何をもって昇順というのか分からなかったのですが、どうも

     X<Y<Z となるようなものを、Xが小さい順に求めていこう

ということのようでした。

 

 それにしても・・・

 たとえば、X=3のとき

 X=3×1 , Y=(3−1)/2=4 , Z=(3+1)/2=5

となり、(3,4,5)のピタゴラス数がでます。

 ところが、X=4のときも

 X=4×2/2 ,  Y=(4−2)/4=3 , Z=(4+2)/4=5

となり、順序だけ入れかわった(4,3,5)のピタゴラス数がでてきます。

 これでは、ピタゴラス数の昇順の求め方にならないのではないか

と思い、おたずねしたところ、返答はあまりにもあっけらかんとしたものでした。

 つまり、この場合は、X=4、Y=3 というのを見て(コンピュータが判断して)、

飛ばして次に進むというのです。

 つまり、この方法というのは、とりあえずいったんYを求めてしまってから、

おもむろにXとYの大小比較をした上で、X<Yとなっているものだけを残すというものです。

 そうなら、ピタゴラス数の昇順の求め方というよりは、

ピタゴラス数を昇順に計算していくアルゴリズムといった方がふさわしいかもしれませんね。

 じっさい、寺田恵一さまはプログラムを作って、ずいぶん大きな数まで計算なさったようです。

 


● ピタゴラス数 ●

 それでは、少しばかり計算するといたしましょう。

・ X=3 は奇数

     X=3×1 , Y=(3−1)/2=4 , Z=(3+1)/2=5  (3,4,5)

・ X=4 は4の倍数

     X=4×2/2 , Y=(4−2)/4=3 となり X<Y でないのでボツ!

・ X=5 は奇数

     X=5×1 , Y=(5−1)/2=12 , Z=(5+1)/2=13  (5,12,13)

・ X=7 は奇数 ( X=6 は4の倍数でないので飛ばす)

     X=7×1 , Y=(7−1)/2=24 , Z=(7+1)/2=25  (7,24,25)

・ X=8 は4の倍数

     X=8×2/2 , Y=(8−2)/4=15 , Z=(8+2)/4=17  (8,15,17)

・ X=9 は奇数

     X=9×1 , Y=(9−1)/2=40 , Z=(9+1)/2=41  (9,40,41)

・ X=11 は奇数 ( X=10 は4の倍数でないので飛ばす)

     X=11×1 , Y=(11−1)/2=60 , Z=(11+1)/2=61  (11,60,61)

・ X=12 は4の倍数

     X=6×4/2 , Y=(6−4)/4=5 となり X<Y でないのでボツ!

     X=12×2/2 , Y=(12−2)/4=35 , Z=(12+2)/4=37  (12,35,37)

・ X=13 は奇数

     X=13×1 , Y=(13−1)/2=84 , Z=(13+1)/2=85  (13,84,85)

・ X=15 は奇数 ( X=14 は4の倍数でないので飛ばす)

     X=5×3 , Y=(5−3)/2=8 となり X<Y でないのでボツ!

     X=15×1 , Y=(15−1)/2=112 , Z=(15+1)/2=113  (15,112,113)

・ X=16 は4の倍数

     X=8×4/2 は 8/2=4 も 4/2=2 も奇数でないのでボツ!

     X=16×2/2 , Y=(16−2)/4=63 , Z=(16+2)/4=65  (16,63,65)

・ X=17 は奇数 

     X=17×1 , Y=(17−1)/2=144 , Z=(17+1)/2=145  (17,144,145)

・ X=19 は奇数 ( X=18 は4の倍数でないので飛ばす)

     X=5×3 , Y=(5−3)/2=8 となり X<Y でないのでボツ!

     X=15×1 , Y=(15−1)/2=112 , Z=(15+1)/2=113  (15,112,113)

・ X=20 は4の倍数

     X=10×4/2 , Y=(10−4)/4=21 , Z=(10+4)/4=29  (20,21,29) 

     X=20×2/2 , Y=(20−2)/4=99 , Z=(20+2)/4=101  (20,99,101)

・ X=21 は奇数

     X=7×3 , Y=(7−3)/2=20 となり X<Y でないのでボツ!

     X=21×1 , Y=(21−1)/2=220 , Z=(21+1)/2=221  (21,220,221)

 

以下、同じようにしてどんどん・・・

 


● (続)ピタゴラス数 ●

 さて、このホームページでもピタゴラス数はやりましたね。

 (3,4,5) のように、直角三角形の3辺になる整数(の組)を、
ピタゴラス数といったのです。

このホームページでは、こんなふうにやりました。

 直角三角形の3辺を a,b,c とすると

     a + b = c   ・・・ (1)

  まず、(1)の両辺を c でわると

    a    b
    c  c  = 1   ・・・ (2) 

 そこで、(1)のかわりに

     X + Y = 1   ・・・ (3)

 ここで、X,Y が(正の)分数(有理数といいます)であるものをさがすことにしました。

 そうすると、分数 t を用いて、こんなふうに書けました。

              1−t
        X =  1+t2    ・・・(10)

               2t  
        Y =  1+t    ・・・(11)

 ここで、t=n/m とすると、こうなります。

              1−(n/m)    m−n
        X =  1+(n/m)2   m+n2 

               2t      2(n/m)       2mn  
        Y =  1+t  = 1+(n/m)   m+n     

けっきょく、c でわった(X,Y,1)は上のようになり、c でわる前の(a,b,c)は

       ( m−n , 2mn , m+n )  

となります。

 ずいぶん回り道をしましたが、このことは初等整数論という、

わりきれる・わりきれないといったような議論からも出すことができます。

 同じように、わりきれる・わりきれないといったような議論から

Xが奇数のとき X=MN , Y=(M−N)/2 , Z=(M+N)/2

ということも出てきます。

 


● (続々)ピタゴラス数 ●

 さて、メールでもふれていましたが、

     X=m−n , Y=2mn , Z=m+n  (m,nは互いに素)

は、とても有名です。

 もちろん、これとは独立に

    Xが奇数のとき X=MN , Y=(M−N)/2 , Z=(M+N)/2

のようなことを出すこともできるのですが、せっかくだから、あるものは利用しましょう。

 まず、

     X=m−n , Y=2mn , Z=m+n  (m,nは互いに素)

で、Xは奇数、Yは偶数、Zは奇数です。

 もし、Xを偶数にしたければ、

     X=2mn , Y=m−n , Z=m+n  (m,nは互いに素)

と並べかえるだけです。

 ちなみに、Z=m+n は斜辺で、一番長くなっています。

 それから、(3,4,5)はピタゴラス数ですが、

これを全部2倍した(6,8,10)や、3倍した(9,12,15)は必ずピタゴラス数になりますから、

もちろんのぞくことにします。

 

<Xが奇数のとき>

 Xが奇数のときは、

    X=m−n 

     =(m+n)(m−n) 

 ここで M=m+n , N=m−n とします。M,Nともに奇数となります。

     m+n=M
     m−n=N

 この連立方程式を解くと、m=(M+N)/2 , n=(M−N)/2 

 これを代入すると、

     Y=2mn=2×(M+N)/2×(M−N)/2=(M−N)/2

     Z=m+n=(M+N)/4+(M−N)/4=(M+N)/2

となります。

 

<Xが偶数のとき>

     X=2mn , Y=m−n , Z=m+n  (m,nは互いに素)

 ここで、m,nのどちらかは奇数で、どちらかは偶数になります。

 そうでないと、YもZも偶数になってしまい、全部2倍したものはのぞくはずだったのに・・・・・

となってしまいます。

 X=2mn で、mかnは偶数なのですから、Xは4の倍数となります。

 さて、X=4mn/2=(2m)(2n)/2=MN/2 とします。

 ここで、M=2m も N=2n も偶数です。

 ここで、m,nのどちらかは奇数で、どちらかは偶数だったので、

 MとNのどちらかは奇数を2倍した偶数で、どちらかは偶数を2倍した偶数、つまり4の倍数です。

 

 さて、

    2m=M から m=M/2

    2n=N から n=N/2

 これより、

    Y=m−n =(M−N)/4

    Z=m+n =(M+N)/4

 となります。

 


● 斜辺の整数 ●

 ピタゴラス数の斜辺の数は、どんな数でしょうか。

 ここでは、X=m−n , Y=2mn , Z=m+n の順に並べてあります。

     (3,4, , (5,12,13) , (15,8,17 , (7,24,25

     (21,20,29 , (35,12,37) , (9,40,41 , (45,28,53

     (11,60,61 , (33,56,65) , (63,16,65) , (55,48,73

     (13,84,85 , (77,36,85) , (39,80,89 , (65,72,97

 

 じつは、これは完全に分かっています。

 

<65 を斜辺にもつピタゴラス数>

 たとえば、65 を斜辺にもつピタゴラス数があるかどうかを知りたいとします。

 そうしたら、65を素因数分解します。

     65=×13

 すると、5 も 13 も 4 でわると 1 あまる数です。

 こういうときには、m+n=65 となる(互いに素な)m,nがみつかるのです。

 しかも、いまの場合は65が5と13のつの相異なる素因数のかけ算になっているので、

 2−1 =2 通りあるというのです。

 じっさい、(33,56,65) , (63,16,65と2通りあります。

 この2通りを(3,4,(5,12,13から、どうやって出すのかは、かなりおもしろいです。

 複素数で見るのです。

     (3+4i)(5+12i)=−33+56i

     (3+4i)(5−12i)=63−16i

 ちなみに、

     (3−4i)(5+12i)=63+16i

     (3−4i)(5−12i)=−33−56i

 これがわかれば、2−1 =2 通りあるというのは納得ですね。

 

 それに対して、75 を斜辺にもつピタゴラス数はありません。

     75=3×5×5

 ここで 3 は 4 でわると 3 あまる数なので、m+n=75 となる(互いに素な)m,nが

存在しないからです。

 

くわしくは「初等整数論」の本を、意欲のある方は「代数的整数論」の本をみてください。

 


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