ピタゴラス数

● 縄張り師  ●

  校庭のど真ん中に、大きな直角をかいてみようって言われたらどうしますか。

 まさか、先生用の大きな三角定規(さんかくじょうぎ)をもちだして
それをのばして書こうなんて・・・。
 そんなことしたら、のばせばのばすほど、ずれてきてしまいますね。

 こんなふうにするといいのです。

 1本の「なわ(ロープ)」を用意します。
 そして、同じ長さになるように、折りたたんでは目印(めじるし)をつけていきます。

 

 それから、3:4:5 のところで折り曲げます。
 そうすると、一番長い辺(斜辺)の「5」に向かい合った角が直角になるのです。

 

 

 このことは、ずっと昔から(なんと紀元前から)知られていたそうです。

 すごいですね〜。

 でも、よく考えてみたら、直角もつくれないようでは
ピラミッドが建てられるはずないですよね。

 


● ピタゴラスの定理  ●

 (3,4,5) のように、直角三角形の3辺になる整数(の組)を、
ピタゴラス数といいます。

 (3,4,5)の他にどんなものがあるか知っていますか。
 なんと、そんな数は無限に多くあるのですよ。

 さあ、これからピタゴラス数を見つけていきましょう。
(高校生以上の人なら、お勉強したことあるって人も多いはずです。)

 

 さて、ピタゴラスの定理三平方の定理)というのは知っていますね。

 直角三角形の3辺を a,b,c とすると

     a + b = c   ・・・ (1)

となるし、その反対(逆)に三角形の3辺の間に(1)の関係がなりたてば
その三角形は直角三角形だよ、というものです。

 a=3,b=4,c=5 とすると

     a + b = 9 + 16
                           =25

          c =25

ですから、たしかに(1)がなりたちますね。

 そこで、(1)をみたす(正の)整数 a,b,c を
(3,4,5)のほかにどんなのがあるかさがしていきましょう。

 いろいろなやり方があるのですが、今回はグラフを使いますね。

 まず、(1)の両辺を c でわると

    a    b
    c  c  = 1   ・・・ (2) 

 そこで、(1)のかわりに

     X + Y = 1   ・・・ (3)

 ここで、X,Y が(正の)分数(有理数といいます)であるものをさがすことにします。

 下の図でいうと、(4,3,5)のかわりに(4/5,3/5)をみつけようということです。

 ついでに、(3,4,5)の三角形も(4,3,5)の三角形も合同ですから
aの方がbより長いか等しいということにしておきましょう。
 といっても、aとbが同じ長さのときはcは整数どころか分数にもならないので
やっぱり、aの方がbより長いということにしておきます。

 そうすると、

          X > Y  ・・・ (4)

 

 


● 円と三角関数  ●

 さて、いよいよ

     X + Y = 1   ・・・ (3)

 ここで、X,Y が(正の)分数(有理数といいます)で

          X > Y  ・・・ (4)

となるものをさがしていきます。

  (ここのお話を中学生向きに図形でやる方法は、
<Q&A>の「図形でピタゴラス数」にのせてありますので、ぜひ見てくださいね。
 ここでは高校生向きにしてあります。)

 

 (3)をみたす点(X,Y)の集まりは、
(4)は無視して正の数も負の数も分数以外の数(無理数)も全部いれると、
中心が原点(0,0)で半径1の円ですね。

 ちなみに、弧SPの長さをθとすると

   X=cosθ  , Y=sinθ ・・・ (5)

ですから、この sinθ や cosθ が分数(有理数)になるものを
みつけようということです。

 そこで、直線PQの傾きを t とします。

      Y   
    1 + X  = t  ・・・ (6)

 ちなみに、このことは

      sinθ   
    1 + cosθ = tan (θ/2)     ・・・ (7)

ということに対応しています。

 

 さて、XやYが分数ならば、(6)から t も分数ですね。

   XやYが分数 −−> t が分数

 じつは、この逆もいえるというのです。

   t が分数 −−> XやYが分数

 これから、このことをみていきましょう。

 

 ところで、(4)の X > Y ということは、

     t < tan(π/8)=/ −1

ということです。

 

 さて、0<t</ −1 をみたす分数tを1つ選んで点Rをとります。
 そして、点Qと点Rと結んで直線QRと円との交点をP(X,Y)とします。

 直線QRの式は、傾きも、y切片も t ですから

     y = t x + t

     y = t(x+1) ・・・ (8)

となります。P(X,Y)がこの直線上にあるということは式(6)と同じです。

 さあ、t が分数なら、はたして X,Y が分数になるのでしょうか。

 点Pは円と直線の交点ですから、連立方程式(3)(8)の解です。

     x + y = 1   ・・・ (3)

     y = t(x+1) ・・・ (8)

 解いてみましょう。

 (8)を(3)に代入すると

     x + {t(x+1)} = 1

     x + t(x+2x+1) = 1

     (1+t)x + 2tx + t−1 = 0  ・・・ (9)

 さて、円と直線QRの交点はP(,Y)とQ(−1,0)ですから
(9)の解をx=α ,βとすると、それは x=−1です。

 ここで、高校生とくに受験生のみなさんにおなじみの
「解と係数の関係」を用いると

                 2t
    α + β = − 1+t

 これから

                 2t
    +(−1)= − 1+t

 

                2t
        X = − 1+t2    +1

              1−t
        X =  1+t2    ・・・(10)

 

 y座標のYは(8)から

        Y = t(X + 1)

               1−t
        Y = t( 1+t  + 1 )

               2t  
        Y =  1+t    ・・・(11)

 

 これで、tが分数なら、(10)(11)からXとYも分数とわかりました。

 ちなみに、(10)(11)は

                 1−tan(θ/2) 
        cosθ =  1+tan(θ/2)    ・・・(12)

 

                 2tan(θ/2)  
        sinθ =  1+tan(θ/2)     ・・・(13)

に対応しています。


● ピタゴラス数  ●

 0<t</ −1 をみたす分数tは無限に多くありますから、
ピタゴラス数も (3,4,5)だけでなくって無限に多くあることになります。

 では、いくつか計算してみましょう。

<t=1/3>

 t=1/3 を(11)(12)に入れて計算します。

         1−t
   X =  1+t2    ・・・(11)

         1−(1/9)
   X =  1+(1/9)  

         9−1
     =  9+1  

          8 
     =  10

         4 
     =  5

         2t  
   Y =  1+t    ・・・(12)

          2/3  
   Y =  1+(1/9)    

          6  
     =  9+1    

         6  
     =  10   

         3 
     =   5   

 これから (3,4,5)の直角三角形がでます。

 

<t=1/5>

 t=1/5 を(11)(12)に入れて計算します。

         1−t
   X =  1+t2    ・・・(11)

         1−(1/25)
   X =  1+(1/25)  

         25−1
     =  25+1  

         24 
     =  26

         12 
     =  13

         2t  
   Y =  1+t    ・・・(12)

          2/5  
   Y =  1+(1/25)    

          10  
     =  25+1    

         10  
     =   26   

         5 
     =  13   

 これから (5,12,13)の直角三角形がでます。

 

<t=1/4>

 t=1/4 を(11)(12)に入れて計算します。

         1−t
   X =  1+t2    ・・・(11)

         1−(1/16)
   X =  1+(1/16)  

         16−1
     =  16+1  

         15 
     =  17

         2t  
   Y =  1+t    ・・・(12)

          2/4  
   Y =  1+(1/16)    

          8  
     =  16+1    

         8 
     =  17   

 これから (8,15,17)の直角三角形がでます。

 


● 円と2次方程式  ●

 さて、どうしてこんなにうまく話がすすんだのでしょうか。

 そのわけの1つは、2次方程式にありそうです。

 円と直線の交点をもとめるとき、2次方程式(9)がでてきました。
 (3次方程式がでてくるはずありませんよね。)

 2次方程式って、解が2個しかありませんから、
「解と係数の関係」から、(2次方程式の係数が全部分数のとき)
片方の解が分数なら、もう片方の解も分数ってすぐにわかってしまうのです。

 そして、その片方の分数の解を x=−1 つまり点Q(−1,0)のx座標と
あらかじめきめておいたので・・・。

 


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