ランダム・ウォーク

● パスカルの三角形 ●

 「たて」のものを「よこ」にもしない人って、どんな人か知っていますか。

 「めんどうくさがりや」、つまり、「なまけもの」なんです。

 そういわれたら、なにがなんでも
「たて」のものを「よこ」にしなくっちゃ〜ね!

 で、なにを「よこ」にするの?

 パスカルの三角形です。

 パスカルの三角形って、こんな三角形でした。

 

                           1
                         1   1
                       
1   2   1
                     1   3   3   1
                   
1   4   6   4   1
                 1   5  10  10   5   1

 そこで、これを「よこ」にしてみます。

 

 さあ、これでどんな話がはじまるというのでしょうか。

 


● ランダム・ウォーク ●

 「よっぱらい」って、いや〜ですよね。

 足もとがふらついて、あっちへよろよろ、こっちへふらふら・・・。

 じつは、さんすう・数学でも、こんなお話があるのです。

 「コインなげ」をして、

     「表(おもて)」がでたら右へ1歩
     「裏(うら)」がでたら左へ1歩

といったぐあいに歩くのです。

 そうすると、どうなるでしょう。

 たとえば、「裏」がでて「表」がでると、
左へよろよろ、右へふらふらで、
けっきょく、もといたところにもどります。

 さて、この図も、「よこ」から「たて」にしてみます。

 そうすると、今度は「コインなげ」をして、

     「表(おもて)」がでたら上へ1歩
     「裏(うら)」がでたら下へ1歩

とあがりさがりをする「アップ・ダウン・ゲーム」です。

 このよこに、さっきのパスカルの三角形をかくと、
パッと確率がでてきます。

 たとえば、「コインなげ」を2回したら、こうなります。

 じっさいの(よっぱらいの)うごきは、
「x軸(じく)」に平行に、「y軸(じく)」にむかって右から光をあてると、
その「かげ」のうごきになっています。

 「2」のところにくるのは、「A」さんの 1通り
 「0」のところにくるのは、「B」さん と 「C」さんの 2通り
 「−2」のところにくるのは、「D」さんの 1通り

 そうすると、「コインなげ」を2回するのですから、
ぜんぶで 2×2=4(通り)で、

  「 2」のところにくる確率は  1/4
  「 0」のところにくる確率は  2/4 (1/2)
  「−2」のところにくる確率は 1/4

となります。

 下の図をみれば、「コインなげ」の回数をふやしたらどうなるか
すぐにわかりますね。

 ちなみに、x は コインなげの回数、もしくは、コインなげにかかる時間
       y は たどりついたばしょです。

 でも ・・・。

 パスカルの三角形を「よこ」にして、
あるく道を「たて」にするのなら、
さいしょから、どちらもそのままにしておけばよかったのでは?

 


● 「つき」 ●

 こんなふうに考えたことはありませんか。

 おかしいな〜。
 どうして、いつもついていないんだろう。
 ふつう、「プラス・マイナス・ゼロ」がいちばん多いはず。
 だったら、もう少しがんばれば、
いままでの「マイナス」がとりかえせるにちがいない!

 そうそう、コインなげのような「二項分布(にこうぶんぷ)」は、
回数をふやすと、「正規分布(せいきぶんぷ)」にちかずくのでした。

 

 でも、そんな「りくつ」って、なんだかおかしいな〜って思いますよね。

 それに、そもそも「ついてないなあ」と感じるのは、
どういうときなのでしょうか。

 えっ、そんなのあたりまえだって?
 ほんとうに、そうでしょうか。

 もう一度、「アップ・ダウン・ゲーム」でみてみましょう。

 はたして、A,B,C,Dのうち、いったいだれが、
「ついてないなあ」と感じるのでしょうか。

 もちろん、ただのばしょなら、どうだっていいにきまっています。

 そうでなくって、

     「表(おもて)」がでたら 上へ1歩 でなくって 「1」万円もらえる
     「裏(うら)」がでたら 下へ1歩 でなくって 「1」万円はらう

ということにするのです。

 こうすると、

     A   は 「2」万円もらう
     BとC は 「プラス・マイナス・ゼロ」
     D   は 「2」万円はらう

ということで、たしかに「プラス・マイナス・ゼロ」がいちばん多いですね。

 でも、この「アップ・ダウン・ゲーム」で、はたして
BとCは同じくらい、ゲームをたのしく感じていたでしょうか。
 同じくらい、「ついている」って感じたでしょうか。

 もちろん、感じ方のちがいはありますが、
このゲームをやっているあいだ中、

     B は 一度はいい思いをして、そんはしなかったのだし、
     C は 一度はそんをして、いい思いなんてしなかったのです。

 つまり、x軸から上の方にいられたかどうかという点では、

     A,Bは「ついている」もしくは「ついていた方」と感じ、
     C,Dは「ついていない」もしくは「ついていない方」と感じてしまう

のではないでしょうか。

 こんな、「感じ」だって「数」であらわしてしまうのが、さんすう・数学ってものです。

 そこのところを、コインなげの回数をふやして、考えてみましょう。

 


● 「つき」の法則(?) ●

 今度は、「コインなげ」を4回してみます。

 パスカルの三角形は、こうなりますね。

 そうすると、「コインなげ」を4回するのですから、
ぜんぶで 2×2×2×2=16(通り)で、

  「 4」のところにくる確率は   1/16
  「 2」のところにくる確率は   4/16 (1/4)
  「 0」のところにくる確率は   6/16 (3/8)
  「−2」のところにくる確率は  4/16 (1/4)
  「−4」のところにくる確率は  1/16

となります。

 もちろん、「プラス・マイナス・ゼロ」がいちばん多いのです。

 さて、「4」のところにきた人は、ものすごくラッキーです。
 もちろん、ついてるな〜って感じっぱなしです。

 では、「2」のところにきた人は、どうでしょうか。

 4通りのうち3通りまでは、ず〜っと「x軸」より上の方にいられたので、
たぶん「ついている方だな〜」と感じていることでしょう。

 それでは、4通りのうちののこり1通り、
つまり、下の図のようなAさんのケースはどうでしょうか。

 このばあいで、Aさんの「ついている感じ」を、
「数」であらわすということを、考えてみましょう。

 Aさんは、1回目でそんをして、2回目でとりかえし、
3回目と4回目でとくをしました。

 4回中3回勝ったのだから・・・というのも、1つの考え方です。

 でも、べつの考え方だって、できなくはありません。

 たとえば、こんなふうに考えます。

     「ついている」って感じるのは、「x軸」より上の方にいた時間
     「ついてない」って感じるのは、「x軸」より下の方にいた時間

 そうすると、Aさんは半分上で半分下です。

 そこで、「ついている感じ」を、ぜんぶの時間のうち、
「x軸」より上の方にいた時間のわりあいであらわすことにすると、
Aさんの「ついている感じ」は、2/4=1/2 となります。

 えっ、0から1までの間を入れるのは、おかしいって?

 そういう人は、x軸のめもりを1だけずらして考えてください。
 だって、4回目だけ、よろこぶひまもなく、
しゅんかんで終わってしまうなんて、おかしいですからね。

 さて、Aさんのように、このゲームをはらはら、どきどきしながらやっている、
つまり、「ついている感じ」が1/2ぐらいの人って、
ほんとうに一番多いのでしょうか。

 みてみましょう。

 BさんやCさんは、ずっとx軸の上の方です。
 つまり、「ついている感じ」は、4/4=1 です。

 DさんやEさんは、x軸の上の方へ行ったり、下の方へ行ったり、
つまり、はらはら、どきどきです。
 そして、「ついている感じ」は、2/4=1/2 となります。

 こんなふうにして、「コインなげ」を4回したばあいの、
ぜんぶで 2×2×2×2=16(通り)をみてみます。

 まず、「ついている感じ」が 4/4=1 になるのは、
     「4」のところにくる1通りと、
     「2」のところにくる4通りのうち3通りと、
     「0」のところにくる6通りのうち2通りの、
あわせて 6通り です。

 ぎゃくに、「ついている感じ」が 0/4=0 になるのも、
     「−4」のところにくる1通りと、
     「−2」のところにくる4通りのうち3通りと、
     「0」のところにくる6通りのうち2通りの、
あわせて 6通り です。

 そして、「ついている感じ」が 2/4=1/2 になるのは
     「2」のところにくる4通りのうち1通りと、
     「0」のところにくる6通りのうち2通りと、
     「−2」のところにくる4通りのうち1通りの、
あわせて 4通り です。

 けっきょく、ぜんぶで 2×2×2×2=16(通り)のうち、
     「ついている感じ」が 4/4=1 になるのは、6/16=3/8
     「ついている感じ」が 0/4=0 になるのも、6/16=3/8
 そして、
     「ついている感じ」が 2/4=1/2 になるのは、4/16=2/8(=1/4)
となります。

 

 どうですか。

 このゲームを、0のあたりを上へ行ったり、下へ行ったりしながら、
はらはらどきどきでゲームをしている人って、
いがいと1番少ないのですね。

 えっ、それは回数が少ないからで、
もっとたくさん「コインなげ」をすれば、
きっと「ついている感じ」が1/2あたりが、一番多いだろうって?

 ざんねんでした。

 回数をふやすと、「ついている感じ」が1/2だけじゃなくって、
0と1の間の、いろいろな数であらわされる「感じ」をもつ人が、ふえるだけなのです。

 そして、「ついている感じ」が1にちかい数の人や、
「ついている感じ」が0にちかい数の人にくらべて、
「ついている感じ」が1/2あたりの人って、やっぱり一番少ないのです。

 でも、これって、あくまでも「ついている感じ」を、
ぜんぶの時間のうち、「x軸」より上の方にいた時間のわりあい
であらわしたときのお話です。

 「4」のところに行けた人と、
ずっと上にはいたものの、けっきょく「0」になった人が、
同じように「ついている感じ」が1だといわれても
なっとくいきませんよね〜っ!

 (あくまでも、上にいることにいみがあるような、
もっとちがったたとえ話にするべきでしたね。)


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