計算の順序

● 計算の順序(じゅんじょ) ●

 今回は、お母さんからのメールです。

 
 

 今日、子どもに算数を教えていたのですが、

 加減乗除(かげんじょうじょ)のまじった計算では、

 なぜ、かけ算、わり算を先にするのでしょうか?

 

 

 加減乗除とは、

     「加法(かほう)」 つまり 「たし算」

     「減法(げんぽう)」 つまり 「ひき算」

     「乗法(じょうほう)」 つまり 「かけ算」

     「除法(じょほう)」 つまり 「わり算」

のことです。

 これらのまじった計算、たとえば

     1000−100×3

では、まず

     100×3=300

を先に計算してから、次に

     1000−300=700

とひき算をします。

 これは、どうしてかということです。

 


● かっこ ●

 加減乗除(かげんじょうじょ)のまじった計算では、
なぜ、かけ算、わり算を先にするのでしょうか。

 こんなことをいうと、がっかりかもしれませんが、
たんに、そのように約束(やくそく)することにしただけです。

 ほんとうは、「かっこ」を使って、

     (1000−100)×3  ・・・ (1)

とか、

     1000−(100×3)  ・・・ (2)

とか書くべきでしょうが、だれだってめんどうですよね。

 そこで、(2)の場合だけ、「かっこ」を省略(しょうりゃく)することにしたのです。

 だったら、ひき算を先にするって約束すれば、
(1)の方の「かっこ」が省略できて、
それでもよかったのでは・・・って思いますよね。

 そうそう!
 どうして(1)でなくって(2)の方の「かっこ」を省略すると
約束したのでしょうか。

 そのまえに、なぜ省略なんてするのでしょうか。

 もちろん、めんどうだからです。

 だったら、どうせなら、使う回数の多い方を省略した方がいいですよね。

 さて、毎日の生活で(?)、どちらの方をよく使いますか。

 まず、(1)を使うのは、どんな場合でしょうか。

     (1000−100)×3  ・・・ (1)

 たとえば、1000円のものを100円まけてもらって、
3個買うような場合に使いますね。

 つぎに、(2)を使うのは、どんな場合でしょうか。

     1000−(100×3)  ・・・ (2)

 たとえば、100円のものを3個買って、
1000円だして、おつりをもらうような場合に使いますね。

 では、どちらの方をよく使うかって?
 う〜ん、考えてもわかりそうにありません。
 おそらく、そんなことを調べてみた人もいないでしょうね。

 やっぱり、使う回数の問題ではなさそうです。

 


● かけ算 ●

 小学校で、はじめて「かけ算」をならったときのことを、
おぼえていますか。

 それは、

     100+100+100

というように、同じ数のたし算をくりかえすときに、

     100×3

と約束したのです。

 もちろん、100円のものを3個買うなら、その代金は

     100+100+100

のはずですよね。

 これを、

     100×3

と約束したってことは、すでに「買い物の代金」というように、
たし算のくりかえしのけっかを、「ひとまとまり」のものとみなしたいからこそ、
かけ算にしたってことなのです。

 ところで、これまでず〜っと、「ひとまとまり」にしたいときは、
「かっこ」をつけると約束してきました。

 ところが、かけ算っていうのは、もともと「ひとまとまり」にしたいもので、
いうなれば、もともと「かっこ」がついているものなのです。

 だったら、いつでもついている「かっこ」なら、
省略してしまいましょう、ってことではないでしょうか。

 (かなり、いいかげんなお話ですが・・・・)

 


● 星の王子様 ●

 「星の王子様」に、こんなセリフがあります。

     「たいせつなものは、目には見えないんだ。」

 さて、たいせつなものでなくっても、
みえないものを見るというのは、たいへんなことです。

 みえないものを見えるといったり、
きこえないものを聞こえるといったりすると・・・。

 じつは、この計算の順序(じゅんじょ)の問題が、むずかしく感じられるのは、
みえないものを見なければならないからです。

     1000−100×3  ・・・ (3)

 じつは、(3)の式には、「かっこ」が省略されているのです。
 省略されてしまったので、「かっこ」が見えないだけなのです。
 けっして、「ない」わけではありません。
 さいしょから「ない」のなら、省略なんてするひつようもないのです。

 だから、計算の順序というよりは、
省略された「かっこ」の問題なのです。

 そうです!
 消してしまった「かっこ」を、見なければならないのです。
 みえないものを見なければならないのです。

 ですから、子どもさんに説明(せつめい)するときは、

     「ほら、かけ算が先でしょ!」

というのではなく、

     「ほら、もともとは、どこにかっこがついていたのかな?」

といってみてください。

 つまり、なれるまでは、

     1000−(100×3)  ・・・ (2)

というように、消してしまった「かっこ」を復元(ふくげん)する
練習をするといいのではないかと思います。

 それでは、お子さまといっしょに、
お母さんもがんばってくださいね。

 


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