n!の0の個数

● 階乗(かいじょう) ●

 こんなメールをいただきました。

 今年、中学1年生になられた方からです。

 
 

 質問なのですが・・・・

 階乗で末尾に0が何個つくか簡単に調べられるっていわれたんですけど・・・・
 わからないんです。

 10! とか小さい数ならできるんですけど・・・・
 3000! とかになるとわからないんです。

 やり方を教えてもらえませんか?

 

 中学1年生で、階乗(かいじょう)を知っているってことから、おどろきです。

 だって、階乗っていうのは、高校でお勉強することですから・・・。

 それでは、まず階乗についてです。

 階乗は階段(かいだん)のような(?)乗法(じょうほう)、つまりかけ算です。

 階段をおりるとき、たとえば5段の階段なら

     5段 , 4 段 , 3段 , 2段 , 1段

っていうぐあいにおりますよね。

 これらをかけ算すると、

     5×4×3×2×1

となります。

 これを、5の階乗といって、 5! とあわわすのです。

 つまり、

     5!=5×4×3×2×1

       =120

 ほかにも、こんなぐあいになりますね。

     1!=1

     2!=2×1=2

     3!=3×2×1=6

     4!=4×3×2×1=24

     5!=5×4×3×2×1=120

     6!=6×5×4×3×2×1=720

     7!=7×6×5×4×3×2×1=5040

     8!=8×7×6×5×4×3×2×1=40320

     9!=9×8×7×6×5×4×3×2×1=362880

     10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1=3628800

 

 ずいぶん大きな数になってきましたね。

 これでは、10!ならいいけど、
3000!なんて気が遠くなりますね。

 


● 階乗で末尾(まつび)の0の個数 ●

 さて、質問はこうでしたね。

     10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1=3628800

なら、おしりの方にが2個ついています。

 では、3000!なら、おしりの方にが何個ついているか
というのです。

 じつは、この問題は、

     わりきれる?わりきれない?

といった問題です。

 もちろん、10で何回わりきれるかということです。

 10!なら、10で2回はわりきれるけれど、
3回わりきることはできないから、
おしりの方にが2個つくけど、3個はつかないのです。

 そして、

     わりきれる?わりきれない?

といったことは、

     素因数分解(そいんすうぶんかい)

の問題なのです。

 素因数分解というのは、まるで遺伝子情報(いでんしじょうほう)のように、
わりきれる?わりきれない?といったすべての情報なのです。

     10=2×5

ですから、

     10で何回わりきれるか

といのは、

     素因数分解したら、2と5がセットで何回でてくるか

というのと同じことです。

 たとえば、

     4!=4×3×2×1=24

が10で1回もわりきれず、そのためおしりに0がつかない
そのわけは、

     4!=×3×2×1

       =2×2×3×2

 4!の素因数分解に2は3回も出てくるけど、
5は1回も出てこないので、
けっきょく、2と5のセットは1セットもできないからです。

 そして、

     5!=5×4×3×2×1=12

が10で1回はわりきれるけど、10で2回はわりきれず、
そのためおしりに0は1個つくけれど、2個はつかない
そのわけは、

     5!=5××3×2×1

       =5×2×2×3×2

 5!の素因数分解に2は3回も出てくるけど、
5は1回しか出てこないので、
けっきょく、2と5のセットは1セットしかできないからです。

 それでは、つぎに、階乗のなかに、
2や5が何回でてくるかを、みていくことにしましょう。

 


● 階乗での素因数の個数 ●

 さあ、これから10!が2で何回わりきれるか、
つまり10!の素因数分解に2が何回でてくるかをみていきましょう。

     10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1=3628800

 ここで、いきなり素因数分解せずに、じゅんをおってやっていきます。

     10,9,8,7,6,5,4,3,2,1

つまり、(たんに、小さい数から書きなおしただけですが・・・)

     1,2,3,4,5,6,7,8,9,10

の中で、2でわりきれるものは(2の倍数は)

     10÷2=5

なので、5(個)あります。

 それらは、

     ×1,×2,×3,×4,×5

つまり

       2 , 4 , 6 , 8 , 10

です。

 のこりの、

       1 , 3 , 5 , 7 , 9

からは、2がでてくる心配(しんぱい)はいらなくなりました。

 さて、

       2 , 4 , 6 , 8 , 10

つまり、

     ×1,×2,×3,×4,×5

からでてくる2の個数ですが、
まず、これら5個の2をのぞいて、
あとどれだけ2がでてくるかをみていくことにします。

 つまり、

     ×1,×2,×3,×4,×5

から2をとりのぞいた、

       1,   2,  3,  4,  5

から、まだどれだけ2がでてくるかをみていくのです。

 それは、

     5÷2=2 あまり 1

なので、2(個)あります。

 それらは、

     ×1,×2

つまり

       2 , 4

です。

 1, 2, 3, 4, 5 のうちの、のこりの

       1 , 3 , 5

からは、2がでてくる心配(しんぱい)はいらなくなりました。

 さて、

       2 , 4

つまり、

     ×1,×2

からでてくる2の個数ですが、
さらに、これら2個の2をのぞいて、
あとどれだけ2がでてくるかをみていきます。

 つまり、

     ×1,×2

から2をとりのぞいた、

       1,   2

から、まだどれだけ2がでてくるかをみるのです。

 それは、

     2÷2=1

なので、1(個)あります。

 つまり、

     ×1

の2です。

 

 これらを全部あわせると、10!の素因数分解には2が

     5+2+1=8(個)

でてくることがわかります。

 まとめると、こんな計算になります。

     10÷2=            (個)

     ÷2= あまり 1      (個)

     ÷2=1             (個)

   ( ÷2 = あまり 1      (個) 

     あわせて     5+2+1=8 (個)

 

     10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1=3628800

           2    2    2   2    2   ・・・ 5(個)

                2        2        ・・・ 2(個)

                2                 ・・・ 1(個)

 

 同じようにして、10!が5で何回わりきれるか、
つまり10!の素因数分解に5が何回でてくるかをみてみましょう。

     10÷5=            (個)

    ( ÷5 = あまり 2     (個) 

     けっきょく            2 (個)

 

     10!=10×9×8×7×6×5×4×3×2×1=3628800

           5           5          ・・・ 2(個)

 

 ずいぶん長くなりましたが、
これで、10!の素因数分解に2は8回も出てくるけど、
5は2回しか出てこないので、
けっきょく、2と5のセットは2セットしかできないとわかりました。

 つまり、10!は
0で2回はわりきれるけど、10で3回はわりきれず、
そのためおしりに0は2個つくけれど、3個はつかないのです。

 今回、わざわざ2と5のでてくる個数をしらべましたが、
2と5のセットとなると、少ない方になりますから、
5のでてくる個数だけしらべればよいことになります。

 


● 3000!の末尾(まつび)の0の個数 ●

 では、3000!なら、おしりの方に0が何個ついているか
計算してみましょう。

 この問題は、2と5で何回われるかということで、
けっきょく、5で何回われるかということになったのですね。

 

     3000÷5=600

      600÷5=120

      120÷5=24

       24÷5=4 あまり 4

     (  4÷5=0 あまり 4 )

     あわせて 600+120+24+4=748

 これから、けっきょく0は748個あることがわかりました。

 

 さいごに、公式(こうしき)などにまとめるときは、
ちょっと、ちがったふうに計算します。

     3000÷5=600

は、3000 と 5 しか使っていないのでいいのですが、

      600÷5=120

も、3000 と 5 しか使わないでおきたいのです。

 そうすると、

      600      600×5       3000
     -------- = ------------ = ----------
       5         5×5        5  

ですから、

      600÷5=120  のかわりに  3000÷ 5 =120

のようにすればよいのです。

 ちなみに、 というのは 5×5 のことで、
 なら 5×5×5 のことです。

 あとも、おなじようにして

     3000÷5=600

     3000÷5=120

     3000÷5=24

     3000÷5=4 あまり 500

   ( 3000÷5=0 あまり 3000 )

     あわせて 600+120+24+4=748

 これから、おなじように0は748個あることがわかります。

 

 そして、公式にまとめたいなら、さらにガウス記号を使うだけのことです。

 

 


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