ぞろ目 |
● ぞろ目 ●
静岡の中学校の先生からメールをいただきました。
『17段目の秘密』というタイトルだそうです。
それは、こんなものです。
1段目は「すきな数」を書きます。たとえば「123」とします。
2段目は「ぞろ目の数」を書きます。たとえば「555」とします。 3段目は「1段目と2段目をたした数」を書きます。ただし各位をたして、くりあがりはしません。 1+5=6,2+5=7,3+5=8 で 「678」です。 4段目は「2段目と3段目をたした数」を書きます。ただし各位をたして、くりあがりはしません。 5+6=11,5+7=12,5+8=13 で 「123」です。 このちょうしで、「17段目」までやっていきます。 1段目 123 ・・・ すきな数 「17段目」でまたぞろ目の数になりました。 これが『17段目の秘密』だそうです。 |
この中学校の子どもたちは、ちゃんと文字式をつかって証明したそうです。
そればかりでなく、こんなことを考えてみたそうです。
それは、「たし算」を「かけ算」にしてみたら?・・・ってことでした。
そうしたら、おもしろいことに気づいたのです。
でも、さすがの子どもたちも、その証明まではできなかったというわけです。
1段目は「すきな数」を書きます。たとえば「123」とします。ただし0は使いません。
2段目は「ぞろ目の数」を書きます。たとえば「333」とします。ただし0は使いません。 3段目は「1段目と2段目をかけた数」を書きます。ただし各位をかけて、くりあがりはしません。 1×3=3,2×3=6,3×3=9 で 「369」です。 4段目は「2段目と3段目をかけた数」を書きます。ただし各位をかけて、くりあがりはしません。 3×3=9,3×6=18,3×9=27 で 「987」です。 このちょうしで、どんどんやっていきます。 1段目 123 ・・・ すきな数 すると、「3段目から8段目」までと「9段目から14段目」は同じ数のくりかえしになっています。 これが子どもたちが見つけた『回る6段の不思議』(?)です。 |
● 17段目の秘密 ●
それでは、さっそく証明しましょう・・・なんて言いません。
そう、1つの例で信じてしまってはいけません。
ためしに、いくつかやってみましょう。
まずは、『17段目の秘密』です。
1段目 123 2段目 111 3段目 234 4段目 345 5段目 579 6段目 814 7段目 383 8段目 197 9段目 470 10段目 567 11段目 937 12段目 494 13段目 321 14段目 715 15段目 036 16段目 741 17段目 777 |
1段目 123 2段目 222 3段目 345 4段目 567 5段目 802 6段目 369 7段目 161 8段目 420 9段目 581 10段目 901 11段目 482 12段目 383 13段目 765 14段目 048 15段目 703 16段目 741 17段目 444 |
1段目 123 2段目 333 3段目 456 4段目 789 5段目 135 6段目 814 7段目 949 8段目 753 9段目 692 10段目 345 11段目 937 12段目 272 13段目 109 14段目 371 15段目 470 16段目 741 17段目 111 |
1段目 123 2段目 444 3段目 567 4段目 901 5段目 468 6段目 369 7段目 727 8段目 086 9段目 703 10段目 789 11段目 482 12段目 161 13段目 543 14段目 604 15段目 147 16段目 741 17段目 888 |
どれも「17段目」でぞろ目になっています。
でも、「2段目」のぞろ目と「17段目」のぞろ目は、
「555」のときとちがって、いっしょにはならないですね。
もちろん、「1段目」の数は「123」でなくっても、なんだっていいのです。
さて、中学校のみなさんのように、文字を使ってみていきましょう。
まず最初に、ここで数字を3つ並べたのは、たんなる「みばえ」にすぎないことに気づきますね。
だって、それぞれ各位だけの計算であって、お互いに関係してこないからです。
これは、3つ並べて「ぞろ目」という形で「みばえ」をはかっているだけなのです。
問題は、1段目の数を何にしようと、2段目の数から17段目の数が決まってきてしまうということです。
1段目 123 ・・・ すきな数
2段目 555 ・・・ ぞろ目の数
3段目 678
4段目 123
5段目 791
6段目 814
7段目 505
8段目 319
9段目 814
10段目 123
11段目 937
12段目 050
13段目 987
14段目 937
15段目 814
16段目 741
17段目 555 ・・・ ぞろ目の数
つまり、1段目の「123」の「1」から始めようが、「2」から始めようが、「3」から始めようが、
そんなものに関係なく、「5」だけから、17段目は「5」になるというわけです。
それを3つ並べて、まるでスロットマシンのように「みばえ」をはかったというわけです。
いくつならべたっていいけど、ふつうスロットマシンって3つならべるようですね。
次に、くりあがりをしないということは、どういうことなのかを考えてみましょう。
5+6=11,5+7=12,5+8=13 で 「123」 としていますが、
ここで、1,2,3 というのは 11,12,13 を10でわったあまりですよね。
11÷10=1あまり1 ,12÷10=1あまり2 ,13÷10=1あまり3
つまり、くりあがりをしないで「1の位」を書くということは、「10でわったあまり」を書くということです。
さて、これでじゅんびがととのいました。
それでは、1段目の1の位を「a」、2段目の1の位を「b」として計算してみましょう。
もちろん、1の位でなくって他の位でも同じことです。
1段目の1の位 a
2段目の1の位 b
3段目の1の位 a+ b を10でわったあまり
4段目の1の位 a+ 2b を10でわったあまり
5段目の1の位 2a+ 3b を10でわったあまり
6段目の1の位 3a+ 5b を10でわったあまり
7段目の1の位 5a+ 8b を10でわったあまり
8段目の1の位 8a+ 13b を10でわったあまり
9段目の1の位 13a+ 21b を10でわったあまり
10段目の1の位 21a+ 34b を10でわったあまり
11段目の1の位 34a+ 55b を10でわったあまり
12段目の1の位 55a+ 89b を10でわったあまり
13段目の1の位 89a+144b を10でわったあまり
14段目の1の位 144a+233b を10でわったあまり
15段目の1の位 233a+377b を10でわったあまり
16段目の1の位 377a+610b を10でわったあまり
17段目の1の位 610a+987b を10でわったあまり
ここで、aやbの係数の
1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610
は、このホームページでも取り上げたフィボナッチ数ですね。
さて、17段目の 610a+987b を10でわったあまりはいくらでしょうか。
610a+987b=610a+980b+7b
610a や 980b は 10 でわりきれますから、7b を 10でわったあまりです。
ここで、あまりが a と関係ない数 になったことがポイントです。
それでは、じっさいにどうなるか見てみましょう。
<b=1>つまり 2段目が「111」のとき
7b=7×1=7 で 10でわったあまりは 7 だから 17段目は「777」
<b=2>つまり 2段目が「222」のとき
7b=7×2=14 で 10でわったあまりは 4 だから 17段目は「444」
<b=3>つまり 2段目が「333」のとき
7b=7×3=21 で 10でわったあまりは 1 だから 17段目は「111」
<b=4>つまり 2段目が「444」のとき
7b=7×4=28 で 10でわったあまりは 8 だから 17段目は「888」
<b=5>つまり 2段目が「555」のとき
7b=7×5=35 で 10でわったあまりは 5 だから 17段目は「555」
<b=6>つまり 2段目が「666」のとき
7b=7×6=42 で 10でわったあまりは 2 だから 17段目は「222」
<b=7>つまり 2段目が「777」のとき
7b=7×7=49 で 10でわったあまりは 9 だから 17段目は「999」
<b=8>つまり 2段目が「888」のとき
7b=7×8=56 で 10でわったあまりは 6 だから 17段目は「666」
<b=9>つまり 2段目が「999」のとき
7b=7×9=63 で 10でわったあまりは 3 だから 17段目は「333」
● 回る6段の不思議 ●
それでは、かけ算の方はどうなるのでしょうか。
・ 数字を3つ並べたのは、たんなる「みばえ」にすぎないこと
・ 「10でわったあまり」を考える
といったことは、同じです。
まずは、数をどんどんかけていって、10でわったあまりを見てみます。
( )の中が10でわったあまりです。
・ a=1 (1) ,a2= 1 (1) ,a3= 1 (1) ,a4= 1 (1) ,a5= 1 (1)
・ a=2 (2) ,a2= 4 (4) ,a3= 8 (8) ,a4= 16 (6) ,a5= 32 (2)
・ a=3 (3) ,a2= 9 (9) ,a3= 27 (7) ,a4= 81 (1) ,a5= 243 (3)
・ a=4 (4) ,a2=16 (6) ,a3= 64 (4) ,a4= 256 (6) ,a5= 1024 (4)
・ a=5 (5) ,a2=25 (5) ,a3=125 (5) ,a4= 625 (5) ,a5= 3125 (5)
・ a=6 (6) ,a2=36 (6) ,a3=216 (6) ,a4=1296 (6) ,a5= 7776 (6)
・ a=7 (7) ,a2=49 (9) ,a3=343 (3) ,a4=2401 (1) ,a5=16807 (7)
・ a=8 (8) ,a2=64 (4) ,a3=512 (2) ,a4=4096 (6) ,a5=32768 (8)
・ a=9 (9) ,a2=81 (1) ,a3=729 (9) ,a4=6561 (1) ,a5=59049 (9)
ここでわかることは、「aを10でわったあまり」 も 「a5を10でわったあまり」 も同じだということです。
このようなことは、大学の「群論」でお勉強します。
ですから、10でわったあまりを問題にしている時は、a5 を a でおきかえてしまいましょう。
もちろん、b5 は b でおきかえます。
それでは、1段目の1の位を「a」、2段目の1の位を「b」として計算してみましょう。
もちろん、1の位でなくって他の位でも同じことです。
矢印の右の方は、a5 を a で、b5 を b でおきかえたものです。
1段目の1の位 a ------> a
2段目の1の位 b ------> b
3段目の1の位 ab ------> ab
4段目の1の位 ab2 ------> ab2
5段目の1の位 a2b3 ------> a2b3
6段目の1の位 a3b5 ------> a3b
7段目の1の位 a5b8 ------> ab4
8段目の1の位 a8b13 ------> a4b
9段目の1の位 a13b21 ------> ab
10段目の1の位 a21b34 ------> ab2
11段目の1の位 a34b55 ------> a2b3
12段目の1の位 a55b89 ------> a3b
13段目の1の位 a89b144 ------> ab4
14段目の1の位 a144b233 ------> a4b
それにしても、「aを10でわったあまり」 も 「a5を10でわったあまり」 も同じだなんて、
中学生は知らないですよね〜!
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小林吹代
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