(続)行列の発見者 |
● 3つの行列 ●
前回の続きです。
3つの方のピタゴラス行列の最初の発見者は誰なのかという話でした。
もちろん、この3つの行列を「○○行列」などと自分の名を冠して称するには
最初の発見者でなければなりません。
本の「おわりに」には書かせていただきましたが、
このことが発見されて、すでに50年程経っているのです。
さらに、5つの方の行列が発見されてからでも、すでに30年近くたっているのです。
だれかが「○○行列」と称したからといって、その名称が妥当という根拠にはなりません。
それに、そう称した者は、○○が先人の業績に触れなかったために、
「○○が最初の発見者!」と信じて命名した可能性もあるのです。
まして、この行列の最初の発見者が自分ではないことをすでに知っていながら、
この行列を使ったり、「○○行列」の○○の名を冠しないことに、
憤慨して抗議までするのはいかがなものでしょうか。
● 3つの行列の発見者 ●
5つの行列の方は、まだそれほどでもないようですが、
3つの行列はすでに世界中に流布しています。
インターネットで検索すれば、(英文では)いくつも出てきます。
本の「おわりに」では、その中のいくつかを紹介させていただきました。
あらぬ情報にまどわされないためにも、ここでも紹介させていただきます。
まずは、「WIKIPEDIA」です。(http://en.wikipedia.org/wiki/Pythagorean_triple)
これの、Parent/child relationships を見てください。
次に、「Worfram MathWorld」です。(http://mathworld.wolfram.com/PythagoreanTriple.html)
「Pythagorean Triple」では、3つの行列の後に、
これはRoberts(1977)によって発見されたと書かれています。
最後は、Dan Romik の論文 「The
dynamics of Pythagorean_triples」(2004)です。
(http://www.lacim.uqam.ca/~plouffe/OEIS/citations/0406512.pdf)
この論文の中に、最初に発見したのは F.J.M.Barning(1963)で、
さらにその後、数人によって独立に発見されたと書かれています。
次のプログラムは、とても便利です。
また、この行列がすでに世界中で使われているという例の1つです。
「Pythagorean Triples」 (http://www.hbmeyer.de/pythagen.htm)
● 数理科学 2008年8月号 ●
じつは、本の発刊となぜか時を同じくして、この行列が雑誌で取り上げらました。
数理科学 2008年8月号 No.542 (株)サイエンス社 発行 (http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=4910054690880&YEAR=2008)
特集:「数の魅力」
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「ピュタゴラス数」 という記事を寺井伸浩氏が(p18〜p23)に書かれているので、
ここに引用させていただきます。
一般に,すべての原始ピュタゴラス数はAの他に 2つの行列 1 −2 2 −1 2 2 B= 2 −1 2 , C= −2 1 2 2 −2 3 −2 2 3 を用いれば同様に得られる.つまり,次が成り立つ. =========================================
寺井伸浩 「ピュタゴラス数」 (数理科学 2008年8月号)より |
ここで、Aは前の方のページ(p18)に書いてあります。
1 2 2 A= 2 1 2 2 2 3 寺井伸浩 「ピュタゴラス数」 (数理科学 2008年8月号)より |
さらに、p23では、次のように書かれています。
本稿では「Hall流の行列によるベキ表示」をしたので簡潔で美しいものが得られた.
寺井伸浩 「ピュタゴラス数」 (数理科学 2008年8月号)より |
また、参考文献の1つに次があげられていました。
[Ha]A.Hall, Genealogy of Pythagorean triads,Mathematical Gazette 54 (1970),377-379.
寺井伸浩 「ピュタゴラス数」 (数理科学 2008年8月号)より |
この記事では、行列はHall(1970)によるものとなっています。
いずれにしても、「○○行列」の名称も、「○○」の名も、
どこにも記載されていないことをお知らせいたします。
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小林吹代
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